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『スパイはどんな人に対してもある程度疑いを持つべきである』 男はそう思いながら仕事をしている。 今こうして生きていられるのもその信条のおかげといえる。 その日、男はある任務があり観覧車に乗っていた。 しばらく外をながめた後、一服しようとして気付いた。規則的な電子音に。 男の観覧車には時限爆弾が仕掛けられていたのだ。 ずいぶん長いタイムリミットをくれたなと男は苦笑しながら爆弾を解除しようとした。 しかしスパイでありながら爆弾の勉強を怠っていたので最後に白の導線を切るのか青の導線を切るのか分からなかった。 そこで携帯電話を取り出し爆弾を研究している友人に電話をかけた。 そしてどちらを切ればよいのかきいてみた。 「それは白を切るタイプだな。そのぐらい勉強しておけよ。」 友人は見下したような態度で教えてくれた。 さっそく白の導線を切るとカウントダウンがとまった。 男はホッとしてタバコを咥え直す。 火をつけようとしたがタバコは汗でぬれていて使い物にならなかった。 新しいタバコを出そうとすると電話が鳴り出した。 「君はどんな人にも疑いを持つ主義ではなかったのかね」 『よいスパイであるほどその存在を知っているものは少ない』 男は上司にそう教えられた。 裏の一部のみに知られていて表社会では誰一人としてその存在を知らない。それが理想のスパイ。 男は一流のスパイになりたかった。だから自分の事を知っているものはすべて消した。 たとえどんなに親しい友人でも… 一人目は男を学生時代いじめていた奴だった。 男はそいつに向かって憎しみを込めてトリガーを引いた。 やってすぐはせいせいしたが次第に罪悪感を感じ始め、眠れない夜が続いた。 二人目は男を捨てた女だった。 やはり初めはスッキリしたが激しい自己嫌悪に襲われた。 男を知るものはだんだん減ってゆきとうとう最後の一人となった。 そいつは一番の親友で一番たくさんケンカをしたやつだった。 男としばらく雑談をし、紅茶を飲んで親友は死んだ。 男は多少後悔しながらもこれが俺の仕事なんだと割り切った。 「君のところへ来たスパイ志望の男はどうなった」 「はい。今では優秀なスパイになりました」 と男の上司は答えた。 「君が言うからには相当優秀なようだな。ならば爆弾テロリストとして訓練してみるか」 すると男の上司はあわてて付け足した。 「とんでもない、奴は確かに優秀ですがそれはスパイの話。奴は孤独が嫌いで裏の人間と親密にしています」 「そうか、爆弾テロリストの教訓は『表でも裏でも自分と親しい奴は消せ』だからな」 |