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――ボッ。 教室が、ライターの灯で一瞬照らされ、パチンという音と共に、再び闇に帰った。 深々と香ばしい煙を吸いこみ、ニコチンが身体中に染みわたっていくのを感じ、そして、ゆっくりと、吐き出す。煙は、立て看板、青いシートがかけられた屋台の材木、山積みにされた色とりどりの紙テープの間を、ゆらゆらとただよい、闇に混じってきえた。 「…………」 俺はそれから煙草をふかすでもなく、ただくわえて真夜中の闇をながめていた。――数分がたち、煙草の灰が長くなってきたので、俺は灰皿代わりのコーラの空き缶に手を伸ばした。 「――こおら! なにやっとるかァ!」 驚いた拍子に赤く焼けた灰がズボンの上に落ちた。舌打ちをして慌ててふり払う。声の主、恵は、俺がにらみつけてもまだ笑い転げていた。 「そんなにそっくりだった? わたしのモノマネ?」 「こんな状況じゃ誰でもおどろくだろ、バカ」 「"そんな状況"で陽介クンは、なぁにをやってたのかなあ?」恵はにやつきながら教室に入り、俺の座っている机の横に腰かけた。 俺は何か言おうとしたが、言葉が見つからず、新しい煙草に火をつけた。窓の外では半月がそろそろ顔を隠そうとしている。かすかな虫の音をふくむ秋風が、ポプラの枝を揺らした。 「――終わっちゃったねえ、最後の文化祭」 「…………」 「今年の来場者数は?」 「……一万六千五百」言葉と共に煙を吐く。「去年より三千人多い」 「すっごいじゃん、さすが名広報部長。ダテに三年もやってない!」 恵の拍手がやけに響いた。それも、やがて教室の闇に吸いこまれるようにして消えた。 揺れる枝が、窓ガラスをこする音がする。俺はフィルターの味がしてきたタバコを、空き缶にぐりぐりと押しつけた。 「……ムダなんだよなあ」 怪訝そうに見つめる恵をのこし、俺は机から飛び降り、掃除用具入れを開けた。中からホウキを取り出す。 「毎年思うんだが、なんであんなに苦労するんだろうな」 俺は散らばった灰を集めるために床を掃き始めた。 「終わっちまえば、どんなもんだってみんなムダなのになあ」 「――」 恵も机から飛び降り、ちりとりを取り出した。 そして、集め終わった灰の前に座り、俺を見上げた。 「でも、楽しかったでしょ?」 また、木のこすれる音が聞こえた。俺はちりとりに灰を掃き入れ、灰がゴミ箱に滑り落ちるのを確認してから、においを散らすために窓を開けた。 「……まあ、な」 |