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第13回中高生1000字小説バトル Entry2

「火葬村」

もう何日も空は晴れない。
久しぶりに見つけた空は、物騒な名前だった。
「火葬村。」
読み上げて、心の中で反復する。容赦なく私を打つ雨は、私をつたって地に落ちていく。
その音だけが、脳内に響く。視界を遮断して意味を考える。『火葬』という村の名には似つかわしくない言葉。どんなに記憶の網を探してもひとつの意味でしかとらえられない。―――死者を葬る方法。
躊躇する体と安息を求める衝動がぶつかりあって、村への入村を考える。―――狭い脳内で、自分自身との苦闘の末、村に入ることを決意する。
衣服にしみ込んだ雨水が私の体温を奪っていく。その感覚から逃げるように速足で宿を探す。
快く迎えてくれた宿の主人に、上手く礼も言えないまま、私は眠りについた。

私は、早朝から目を覚ました。
雨音が耳鳴りのように残っているだけで、雨は降っていない。
疲れきった体は、わずかな動作にも悲鳴をあげていたが、耳鳴りが止み始めるにつれ聞こえてくる物音に、耳を傾けているとそんな苦痛も脳から消える。
人のすすり泣く声。それが、隣の部屋から聞こえてくる物音の正体だった。

私の周りで、何かが起きている。
村をドラゴンに襲われたあの日から、何かが少しずつ違ってきている。

ベットから降りることで、体中に痛みが戻る。ようやく、動けるようになったのは、もう昼近くだっただろう。―――曇った空のせいで、太陽が見えない。

宿の外へ出て、辺りを見やる。人影は見当たらない。山のふもとのほうを見やると、煙が上がっていた。
『火葬村』
自然と単語が頭に浮かぶ。ふと、嫌な予感が全身を駆け巡る。内臓が動くような恐怖。――逃げ出そうか?と迷う。
理性と好奇心は私を押しとどめる。本能が危険を発する。
―――――私は、村から逃げ出した。

そして私は今、灰をぶちまけたような空を仰いでいる。
自由の利かない四肢。あざ笑う観客。私は…殺される!
気さくな村人に流されるまま、この地を踏んだ。
鳥葬村。
この周辺の村々は、生存者の埋葬を目的として作られた。ドラゴンの恐怖の前に、人生を悲観した人間の末路。
ドラゴンの恐怖は、人をも狂わせてしまう。
―――――瞳に映る鳥が、近づく。奇妙な鳴き声と狂っている観声。

そう、私の旅はここで終わる。
私の物語もここで終わる。

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