第13回中高生1000字小説バトル Entry3
「死んだらどうなりたい?」
「――――は?」
昼過ぎの柔らかい光が射し込む病室に、奇妙な会話が始まった。
病室には、規則正しくなる機械音も分からないほど暇で、平和な時間がゆっくりと流れている
――――はずだった。
その時間を変えたのは彼女の妙な質問だ。この空間にいるのは彼女と自分の二人だけ。
「だからぁ、火葬と土葬そうとか風葬とか。いろいろあるでしょ」
そういう意味か。
俺はなんて答えて良いのか分からず、いつもよりずっと早く頭を巡らせている間にも、彼女はニコニコして俺の口が開くのを待っている。
「やっぱ日本人は火葬じゃねぇの?」
やっとの思いで答えを見つけ、口からそれを吐き出した。
自分でも彼女が望む答えではないと分かっている。でも普通「死んだ後」なんて聞かれることはないのだから、と渇いた口の中で反芻した。
「えー、なんかソレやだ」
やっぱり彼女は俺の答えを気に入らなかったようだ。
「なら土葬とか?クリスチャンにでも改宗するとか」
「あっ、本気にしてないッ」
青白い顔を歪め、細長いチューヴの組み込まれた水気のない腕を胸の前で絡めている。
何がそんなに不満なんだろう。
それに今は、彼女に「死んだ」後のことなんて考えて欲しくなかった。彼女には今のことだけを考えていて欲しかった。欲しい時間は今だけだった。
「どうしたの?ぼーっとして」
彼女の屈託のない笑顔で我にかえる。嫌なことしか頭になかったせいか、堅く握った手にはじっとりと汗が滲んでいる。
「なんでもないよ」
彼女には見えないところへ、さり気なく滲んだ手を持っていく。
変なことで彼女を心配させたくはない。
「あのね、さっきの続きなんだけど」
「さっきの続きって、自分が死んだ後はってことか?」
言われた言葉を繰り返す。
「そう、それ。私はね、死んだら焼いてもらうの」
それは火葬だろ、と言おうと思ったが、その考えは彼女の次の言葉であきらめた。
「でもただ焼くだけじゃ私がいっぱい残るから、もっと私だって分からなくなるまで、灰になるまで焼いて欲しいの。そして灰になった私を空に投げて欲しいんだ。青くても赤くても黒くても。何色でもいいし、夜明けでも夕焼けでもいつだっていい。私を空に投げてくれさえすれば。でも、私に死んだ命日には会いに来ないで。私たちの出会った日に会いに来て。――――私を殺さないで」
彼女は笑っていた。
そして俺は今、あの日のように青いこの空を、見上げている。