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第16回中高生1000字小説バトル Entry12

茨の木

 むかしむかし、ある所にきれいなきれいなお姫様が住んでいました。お姫様は、流れるような金の髪、大空が流した涙のような蒼い瞳をしていて、皆にとてもとても愛されておりました。
 なにしろお姫様は、王様とお妃様との最初のお子様だったので、王様の溺愛ぶり、お妃様の甘やかしぶり、国民の忠誠ぶりは並み大抵のものではなく、お姫様はどんどん贅沢になってゆきました。
 そんなお姫様を見かねた国の魔法使いは、お姫様にある贈り物をしました。お姫様が生まれたと同時に実った茨の種です。今までの十四年間はその魔法使いが育てていましたが、お姫様に育てさせることにしたのでした。それは、お姫様に、愛される事は有限だが、愛する事は無限であり、大切なものをちゃんと愛せることがはるかに素晴らしいという事を教えるためでした。
 しかし、もちろん茨を育てるのは、何も育てた事のないお姫様にとって簡単な事ではありません。ですから、その魔法使いは、
「水や肥料やを与える代わりに毎日その茨の前に行って、その日した良い行い、悪い行いを自分の中で思い起こしなさい。でないと、あなたの周りはどんどん乏しくなっていくよ」
と言いました。
もちろんお姫様はそんな事は信じませんでした。面倒な事でもありましたし、自分が良い行いをあまりしていない事をちゃんと分かっていたからです。そうして日々が過ぎていく内に、お姫様の国はどんどん悪くなっていきました。敵国がやってきたり、飢饉に襲われたりして、なんとお姫様の立場でさえ生きていくのが難しくなってしまったのでした。
 その時、お姫様はふと魔法使いの言葉を思い出しました。そして恐る恐る茨の前に行き、座りました。お姫様が放っといた茨は黒く変色し、その周りをもっと黒い、不吉なものが取り囲んでいました。お姫様は、恐れおののきながらも魔法使いの言っていたように自分の今日の行いのことを思い起こしました。そして平和になるようにと一生懸命祈りました。
 すると、茨を取り囲んでいた黒いものがふと消え去りました。そしてその日を境に、お姫様は魔法使いとの約束を守るようになり、国には平和が戻り始めました。
 その後、茨についた初めての蕾がほころび、春の訪れを告げている時期には、隣の国の若き王様が接見に来ることでしょう。そして、茨を育てている、見目も心も美しくなったお姫様に一目惚れをするには、もう少しの月日を待たなくてはいけません。

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