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第18回中高生1000字小説バトル Entry3

Color〜心の華〜

緋色の月が輝く。
僕らの生きている世界を照らす。
地面に広がる白は、瞳から流れ出る紅と土の茶が入り混じって、決して綺麗と言える色ではない。口先だけの綺麗事を並べている大人達の汚い部分を映しているようだ。
「ねぇ、母さん。僕は愛されていたのかな?」
答えは返ってこないと分かってる。
目の前は一面の銀世界。
僕の周りだけ黒くてたった一人世界から取り残されたみたい。
「ねぇ、僕は可愛がられていたのかな?」
そんな事自分が一番分かってる。
頬には生温かい液体の流れる感覚。
「母さんといて楽しかったよ」
流れ出る紅を拭うこともせず、ただ焦点の合わない瞳を開いて誰に言うでもなく呟く。
「どんなに邪険にされても、楽しかったんだよ。愛されなくても可愛がられなくてもよかった。ただ、傍に居られるのが嬉しかったんだ」
空からはたくさんの粉雪が降ってくる。
その冷たさももう感じない。
意識が朦朧としてくる。
でも、これだけは言いたい。
「僕は母さんを愛していたよ。だか・・・」
―だから、僕を産んでくれてありがとう―
最後の言葉を続けることなく、僕は瞳を閉じた。口許に小さな笑みをうかべて。
粉雪が掻き消していく。
緋色の月は相変わらず僕らの生きていた世界を照らしている。
ただ違うのは僕の瞳の開かれない事だろうか。
それともこの口から言葉が零されない事だろうか。
僕は真っ紅な花を咲かせた。


「ねぇ、母さん!あそこに赤い花があるよ!」
眩しいくらいの朝日の中、雪を踏みしめる音とともに明るい声が響く。
「どれ?」
女は自分の少し前を歩いている男の子の指差す方向に目をやる。
目に入ったのは血のように紅い狂い咲きの彼岸花。
「ダメ!見ちゃダメ!!」
女は目の前に立っている男の子の腕を掴んで半ば強引に抱きしめる。
男の子は意味が分からず首を傾ける。
「あの花は死神草と言って魂を持ってっちゃうんだよ」
女は抱きしめる腕に力を込める。
「どうして?あんなに綺麗なのに」
女は少し驚いた顔をして、それから寂しげな顔をする。
「そうだね。でも、あんなに綺麗なのは命をかけて咲かすからなんだよ」
「母さんは、誰か連れてかれちゃったの?」
男の子は澄んだ瞳で女を見上げる。
「うん。とっても大切で大事だった子をね」
女は瞳を閉じると、男の子を包んでいた腕を解く。
2人は並んで歩いていく。
2〜3m歩いた所で女が振り返る。
「ありがとう」
――ありがとう。たくさんのモノをくれて、たくさんの事を教えてくれて。
ごめんなさい。大切に出来なくて。
それでもあなたを愛してる。ずっとずっと愛してる。――
その思いは誰に届く事もなく木枯らしに掻き消される。
紅い彼岸花が小さく揺れる。
まるで、笑っているかのように。

―ねぇ、あなたは何色の花を咲かせますか?―

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