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第19回中高生1000字小説バトル Entry12
貴方のからだの上で、何を考えて動いていたか、思い出そうとするんだ。
それは多分、その瞬間二人がつながっていることと、全然関係がなくて、どうでもいいようなことのはずなのに、その記憶の空白が、私を少しずつ少しずつ灰色にしていく。
だから貴方のからだの上で、何を考えて動いていたか、思い出そうとするんだ。
携帯の震動。
「はいはーい」
「もしもし、サヤカ?ごめんね、さっき塾だったんだ」
「なんもなんも」
手鏡をとってベットにからだをやすめた。乾きたてのペティキュアに目がいく。
「…まだこないの?あれ…」
「…うーん」
「もう3日くらいたってこなかったら、調べてみぃ」
「わかったー…」
一緒に不安な思いをわかちたったり、不思議と出来ない。申し訳ない。
「まぁ、彼氏がいるんだからさ、しっかり心の支えになってもらいんしゃい」
枕の具合をととのえる。高めが好きなんだ。
「サヤカ…隆二が、生んでいいって言ってくれたんだ…」
「…いい彼氏じゃん…。大切にしんさいね」
その言葉ですごくしらけた。そのあと即席な優しい言葉を交わしてたしか電話を切らせた。
ねがえって肺の息を布団に押し付けた。
別に羨ましいんじゃない。そんなやすっぽい言葉なんて。私だって、アノヒトはなにもいわず抱きしめてくれたんだ。
胸元が苦しい。
このことを思い出すと、今の恋が安っぽくなりそうでいやだ。今の恋が一番でありたいんだ。
ただ、それだけで、いいのに。 顔が馬鹿みたいにゆがんで、枕を濡らす。
アノヒトはやさしくて、私は自分の意志で殺した。
それだけ。それ以上なにもない。他には何も残らなかった。他には何も残せなかった。
『ねえ、私の奥に貴方との思い出がこびりついてるけどさ、寝る前に一番思い出すのは、貴方とからだかさねたことなの。いけないことしてるなって感じた瞬間とかさ。私を見てるくせに、うわのそらの貴方の視線とか。こんな事ばっかり覚えてるのって、おかしいよね。ただそういうことするのが好きなだけだったのかな。そしたら私は、地獄へおちると思うんだ、きっと』
天井がおちてこないのを、濡れた目で見張る。
あの部屋のシーツの匂いがおもいだせそうで、おもいだせない。
そして果てた後のあのけだるさとむなしさが、常に鮮明。
大好きな人のそばにいると、触れたくなって、キスしたくなって、そして本能が目覚めだす。その螺旋が時折憎くなる。
貴方のからだの上で、何を考えて動いていたか、思い出そうとするんだ。
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