第20回中高生1000字小説バトル Entry5
明日は結婚、やっと家から出れる…私は私に向かってそう呟いた。正直長かった、辛かった。
私の親は22年前に離婚した。そう珍しい話ではない。けど、ハハは弱く、だんだん私に絡んだ。ハハの苦しみも頭では分かってた。でも、この感情は止めれない。そんな自分が悔しく、ハハと仲のいい姉さんがうらやましかった。
そんな時、あの人に出会った。丁寧な言葉遣い、ゆったりとした動き、彼の周りだけ時間がゆっくり流れてるみたいで、ほっとした。
いきなりのベルの音。ふと我に帰る。
『もしもし大橋です』
受話器をとると彼だった。名字にさん付け。それが似合うのが面白くって笑ってると、向こうから困惑した声が聞こえた。胸が暖かくてほこほこした。
とうとう来た結婚式当日、純白のドレスに身を包む。
「梓、これ。病院の同僚の飯塚 幸司。」
姉さんが言った。どうも…と大きな男が一礼する。
「祥子さんにはいつもお世話になっています。」
ハハが、お久しぶりね、と言った。姉さんの彼氏か、と呟くと、あんた私の彼氏だったの?と姉さんが言って笑った。マタ ワタシダケノケモノ?
ふと気づくと後輩たちが話をしていた。
「ほら、藤川先輩って何も言わないけどォ、お局的人でしょ。彼女がいなくなって、風通しがよくなったわよ」
ワタシガイナイト ナンニモワカラナイノニ。
部屋に帰って一人になると、なんだか怖くなった。
『オマエダッテ ワカッテルダロ?ケッコンナンテ デキヤシナイッテ』
これは私の心の声?
椅子に顔をうずめてると、ドアが開いた。
「そろそろですよ」
……嫌よ。こんな気持ちで結婚なんて…。
「結婚しない。出来ない…」
「え…?」
私はいつの間にか泣き出してた。
ハハ以外の人が外に出た。ハハが久しぶりに私の髪をなでた。
「母さんは祥子ちゃんのほうが可愛いんでしょ?」
呟くと、母さんの手が一瞬止まった気がした。
「母さん、何だかほっとした。あんた昔から、棘のない花みたいだったから」
母さんが笑った。久しぶりに母さんの顔を見た気がした。
部屋の外で、皆が心配してくれていた。
何を恐れていたの。心の奥底へ涙の代わりに暖かいモノがパァッと入ってきた。
大きな拍手と歓声が私を包み込む。この拍手が嘘でも、中には本物もある。それだけで満足できた。
私の棘のない花を見てもらうより、本当の花を見て欲しい。だから私のままで生きていこう、この人と一緒に。
幸せが6月の花嫁を包んでいた。