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「友達になりたい」 優しさに飢えていた。 愛に飢えていた。 あたしは怖くなってに バンッ と窓を閉めてしまった。 「(夢、今のは夢っ 最近疲れっぱなしだったから幻を見ただけ)」 その 窓を閉めた後に残っていたのは僅かながらの 後悔 だった。 あたしは毎日空を見ていた。 でも、晴れより曇りの方が断然多くて結構見てて飽きたがそれぐらいしかする事がなかったのも事実である。 あたしがその「曇った空」を窓から見ている訳はあたしがここから動けないから。 みんなが属に言う「ビョウキ」だ。 16歳の時に急にここに連れてこられて 気付いたらこの部屋のベットの上。 お父さん、お母さんは 変な窓からこっちを見てるだけ。 そして、白衣の男からあたしの「病名」を教えてもらった。 エイズ あたしがテレビで見てたのは「10年かかって病魔が襲う絶対死の病」と言う事だった。「治らない病気」だった。 あたしは毎日この病室にいてただ、何となく過ごす事に決めた。 「感染しない病気」って事は知っていたけど あたしがエイズだって知ったら周りの子はあたしの事避けるんだろうなぁって考えたらやっぱり怖くて「外」なんか行けなかった。 ここに「隔離」してもらって「面会謝絶」にしてもらって毎日ここにいた。 することなんかないし 学生が望んでいる事だった。 「何もしないで ただなんとなく過ごす」 事はそう簡単でもないし 淋しい 事でもあった。 毎日のように変な窓から手を振っていてくれた母。 休日には必ず来てくれて手を振ってくれた父。 3ヶ月もすれば 誰もあの 変な窓 から手を振ってくれなくなった。 誰一人 現れなくなった。 今思えばきっとあの2人は「無理」をしていたんだろう。 エイズ = 感染しない のは分かっているけど、いざとなったら・・・ 感染するかもしれない、感染したら嫌だ、じゃあこの窓から覗くだけにしよう、もう 会わないでおこう こうなったのだろうか ? それならそうと 言ってくれれば よかったのに。 淋しさが一層にも増したのはあたしの誕生日。 誰も来なくなったこの部屋で もしかしたら誰かが手を振ってくれるかもしれないとかすかに期待し続けてあの 変な窓 を見続けたあたし。 でも 結局誰も来なくて 一人で泣いた夜。 プレゼントが貰えない事よりも 誰も祝福してくれない事よりも 自分の存在をみんなが忘れてしまった事に 淋しくて 淋しくて たまらなかった。 今からでも 「外」 に行けばよかった。 でも「こんな子いたっけ ? 」って言われるのが怖かった。 こんな怖さに怯えながら あたしは毎日この窓から 「曇った空」 を眺める事に決めたのだった。ここにいたらあたしは本当の孤独を感じられるから。 2度目の誕生日は白衣の女がケーキを持て来てくれた。 真っ白でイチゴが7コのっていた 小さなケーキだった。 ろうそくは 18本 あった。 泣きながらその 「小さなケーキ」 を食べて寝た。 涙は哀しくて流れるけど 多分 枯れて止まるんだろうと思っていた。 なら ありったけの涙 を流してやろうと思った。 流れるだけ 涙には流れて欲しかった。 時々窓から 人が見えた。 それは様々な人だった。 ご老人 親子 男 女。 いっぱいいろんな人を見てると 世界が広いって事に頷ける気がした。 優しかった あたしの父も あたしの病気が何だか分かったら そこらの虫けらみたいに捨てられるモンなんだと思った。 知らない家族が笑いながら窓の外を通ると その子供が憎くなった。 孤独は淋しくて 辛いモノだという事を分からせてやりたかった。 あたしは 知ったから。 孤独という 虫かごを だから 「友達になりたい」 なんて言葉 信じられなかった。 突然窓から現れた不思議な 男。 あたしが何なのか分かっていなくて あたしが孤独なの知らなくて あたしがエイズなのも知らなくて。 多分 あたしがエイズなのを知ったら 何処かへ行ってしまうんだろうと思った。 でも 優しさに飢えていたあたしにとって これは ご馳走だった。 かぶりついて放さない事だって考えた。 でも それはあたしの「ワガママ」なのが分かっていたから。 この人をあたしの「ワガママ」に付き合わすつもりはなかったから。 でも ホントは心臓が壊れるくらいに 放したくなかった。 掻き消してしまった想い出と同じように・・・。 毎日毎日やってきた男は あたしに色々な質問をした。 「君の好きな色は ? 」 あたしが「赤」だと答えたら 真っ赤なドレスを持ってきた。 「君の好きな花は ? 」 あたしが「コスモス」だと答えたら 持ち切れんばかりのコスモスを持ってきた。 不思議な男はやっぱり不思議な男で毎日やってきてくれた。 「淋しい」と言えば唄を歌ってくれたし「帰って」っていったら何も言わずに帰っていった。 不思議な男はあたしに「どいうしてここにいるの ? 」とは一度も聞かなかった。 不思議な男にあたしは言った。 「あなたは 誰なの ? 」と。 一番聞きたくて一番聞けなかった事。 不思議な男はためらいも見せずに素直に言ってくれた。 「ここの近くに住んでいる者です」と。 その言葉に嘘は感じられ無かったけど 嘘のような気がした。 あたしは気づいた。 不思議な男にあたしは自分の「ワガママ」を押しつけてきていた事に。 きっと「ずっとここにいて」と言いたかった。 きっと不思議な男はずっとここにいただろう。 だけど 「もう ここに来ないで」といった。 次の日から不思議な男は来なくなった。 淋しさが押し寄せてきた。 海に有る波のように押し寄せてきては戻り 押し寄せては戻っていった。 でも 来ない代わりに あたしが好きだと言った「コスモス」が必ず置いてあった。 それは一厘だけだった。 毎日毎日 あたしは「コスモス」をいけた。 コップに水を入れて 「コスモス」をいけた。 あたしが言ったから不思議な男は姿を現しはしなかった。 いつの間にか「孤独」に怯え「愛」に飢えていたあたしは消えていた。 催促だってした。 もっともっと「愛」をちょうだい。 もっともっと「優しさ」が欲しい。 優しい唄をきかせてちょうだい。 代わりにあたしも唄うから。 3度目の誕生日。 そして不思議な男はやってきた 抱え切れんばかりのコスモスを抱えて 自分からはなにも催促しなかった不思議な男が 「一緒にいこう」と 手を伸ばして あたしは手を握り 窓から 「外」 へと姿を消した。 あたしは コスモス畑にいた。 あの 不思議な男と一緒に。 あたしは 永遠の眠りについた。 大好きな「コスモス」と不思議な男に見とられながら。 「曇った空」は今日だけは「晴れた空」になっていてくれた。 |