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第6回中高生3000字小説バトル Entry1

通信欄

私はある文芸サイトのスタッフだ。このサイト内のコンテストでは、あまたのインディーズ作家が自らの投稿作品でグランプリの座を競っている。毎月送られてくる小説は、インディーズならではの新感覚が感じられ結構楽しめる。今日もまた、新たなる作品が送られてきた・・・

”古賀メイジ作 「愛のトリカブト」

ある所に、しがない無名作家がいた。・・・”

うーむ・・・。作品に目を通してみたが、その内容はあまり褒められたものではなかった。設定はありきたりだし、表現は陳腐。古賀くんはどうやら初投稿のようだが、経験の無さを差し引いてもイマイチと言わざるを得ないだろう。私はいささか
失望しながら、「通信欄」に目を通した。「通信欄」は我がサイトにおける作品の
投稿箱、すなわち送信フォームにある記入事項のひとつで、作者が自分自身や自分の作品についてあれこれ書きつづるものだ。
どれどれ、古賀くんは何を思ってこの作品を書いたのか・・・。

《通信欄↓ ※ここに記入された内容は掲載されません。》

「私の書いた小説『愛のトリカブト』は楽しんで頂けたでしょうか。つたない文章で申し訳ございません。突然ですが、今回私が作品を投稿させていただいたのには
理由があるのです。実は私、今人生に希望を無くしているのです。つい先日、私の父が自殺したのです。会社をリストラされた翌日に首を吊ってるのを私が発見しました。父は以前から家庭の中でも煙たがられていて、収入が無くなってしまっては家での存在理由が完全に消えてしまうと思ったのでしょう。私はショックのあまり
声も出ませんでした。しかしもっとショックだったのは、それを見た母の行動でした。何と母は保険金を手に入れるため、父の死を物取りの犯行に見せかけようとしたのです。計画は成功し、母は多額の保険金を手に入れました。しかしそれと同時に、私は人間のもっとも醜い姿を見てしまいました。
そんな中、私の唯一の喜びは、もうすぐ訪れる姉の幸福の瞬間でした。姉は以前から交際していた恋人との結婚が決まっていたのです。ショックからも立ち直り、式も予定通りに行われるはずでした。しかしつい1週間前、その喜びは断ち切られました。姉が薬を飲んで自殺したのです。遺書によると、姉はその前日見知らぬ男に
レイプされたのだそうです。大切なひとを裏切ってしまった、もう顔を合わせられない―――そう書かれてありました。
こういう訳で、私は希望を無くしています。そこで、以前から存在を知っていたこのサイトのことを思い出して最後の賭けをしようと思ったのです。もしこのサイト
のコンテストでグランプリを取ったらまだ人生をあきらめずに生きる、取れなかったら父や姉の後を追おうと・・・
これが私の『理由』です。グランプリを取れるよう祈ってます。あ、それと、この
通信欄で審査の結果が左右されるようなことが無いようにしてください。実力で勝たないと嬉しくないですから。グランプリに選んでくださった際には、どこが良かったのかしっかり示してください」

私は今回のグランプリを彼に捧げることに決めた。この状況で本当に実力を優先させるような選考者がいるとしたら、罪悪感というものが全くない人であろう。私は
人一人の命を犠牲にしてまで文学の何たるかを追求するつもりはない。

さあ、私がこの作品を選んだ「理由」を考えなければ・・・。

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