第6回中高生3000字小説バトル Entry8
15歳と言えば、いわゆる思春期の真っ只中である。
その年頃になると、子供は死への願望やら、無への憧れ、勉強や生きて行くことに対しての疑問を持つ・・。
そんな事くらい、知っているわよ。
だから、余計に虚しい。
いつか、この思いが風化されてしまう事が・・。
消えないで、ずっと私の中の全てであればいいのに。
「くっだらない。」
ざわつく教室、もはや注意する事など忘れたような教師は、まるでそれしか出来ない様に手を動かし、黒板に文字を書き続ける。
セラは小さく悪態をついた。
誰も注意しない。
それは自分も同じこと。
だから、くだらないんだ。
それがわかっていても、呆れて、覚めてしまう自分が。
「・・ばかみたい・・」
どうせ聞いても聞かなくても、わかる無いようなんだから。
だって、ソレ昨日やった所なんだよ?
先生。
生徒はわかっていて笑い、無駄な時間を作る。
教師は、そんな事すら気付かないくらい、生徒と関る事を拒絶した。
鐘が鳴って、教師は安心した様に、逃げるように教室を後にする。
更に輪をかけて、騒がしくなる教室。
頭上を飛び交うボールも、机の間を世話しなく行き交う男子達も、特定の人物の机の周りに集まって、TVやアイドルの話しをする女子達も。
ゼンブイラナイ。
呆れてしまうほど、退屈なんだ。
なんの変化も無い、ただ退屈な毎日。
実際こんなもんなんだ、人生って。
とくに、中学校3年間ほど、セラにとって退屈なものは無いだろう。
部活に専念するわけでも無い、色恋沙汰に興味があるわけでも無い。
ほしいものもない。
自分は無感なんだ、とセラは時々おもうときがある。
熱いとか、寒いとかはもちろんあるけれど、悲しいや心がイタイ、怒りなどは無いように思える。
友達もいるし、別に苛められているわけでも…無いだろう。
その場限り、上辺だけの友達ならいくらでもいる。
心から信頼しきっている友達は、いないのだけど。
それは別に悲しいと思った事は無い。
大勢の友達の中にいて、不意に虚しくなる事はあっても、悲しいと思った事は無い。
自分が何かいうたびに、クスクスと笑う女子や、キモいと言うような男子にも、もうなれた。
「セラってば?きいてるのっ?」
「…ん…あ。なに?」
深い思考の海から一気に沖に出たように現実へ引き戻されたセラは、間の抜けた返事をする。
「もうこれで授業終わりだし、どうせ今日もHRないだろうし。
ねぇ、帰りにコンビニで話してこうよぅ。」
甘ったるい香水の馨がする細身の女子、ニナにせがまれながら、セラはカバンに教科書を詰めていく。
「悪いけど、今日雨降ってるでしょ?洗濯物、とり込まないといけないし、暗くなる前にかいものすませたいんだ。」
になの巻き付いてくる腕を払いのけ、誰に挨拶する訳でもなくセラは教室を出た。
カバンがやけに軽い。
廊下を歩いていると学年主任の先生が歩いてきた。
たしか何度か名前を聞いた事がある。でも、名前を覚える気が無かったから、未だに覚えていない。
その先生はセラに近付いて来るともう帰るのか?
笑ったようだ。
「明日も学校、こいよ」
ポン、と頭に乗せられた大きな手。
セラは振り払おうかと思ったが、一応相手は教師で自分は生徒なので止めておいた。
先生の顔を見なかったが、声からして笑っているのだろう。
この先生はたしか年配者にも関らず、陽気で面白いとかいって教師いびりのリストに入れられなかった数少ない生存者だったとおもう。
先生はセラにそれだけいうと、セラの隣のクラスのHRを始めるべく、教室に入っていった。
セラは降り返る事無く、階段を降りていった。
二回についた時、職員トイレから女の泣く声が聞こえてきて、セラは足を止めた。
この声は…しってる。
「なにしてるんですか。粟山先生。」
セラは担任である教師に声をかけた。
職員トイレのドアに持たれかかりながら、鏡の前で泣いている担任を一瞥し、かばんの中に入っているプリントを出した。
辺りにティッシュのゴミを散らばしている担任は何かされるのかと一瞬びくついて、恐る恐るセラの手からプリンとを受け取った。
「なに?これ…?」
カサ…と開きながら呟く担任。
声が掠れていた。
「先生が提案した、『体育大会☆おめでとう!がんばってよね!パーティー』の出席届け。」
みるみる担任の顔に笑顔が浮ぶ。
「セラちゃん!ありがとうぅ!!先生嬉しい!!」
ばっ、と抱きつかれてセラは目を細める。
イヤじゃないけど、イラナイ。
教師狩りの標的に上位に名前の載ったセンセイ。
やる事全部、空振りしてて、それでも…。
「先生。はなして下さい。」
「あ、ゴメンね!センセイ…うれしくって…。また1人でおにく食べる羽目にはならないから…。」
ばかみたいにあったかい。
「ダメよね、センセイすぐおち込んじゃって…どうして、みんな先生の事嫌いなのかしら…?」
また悲しくなったのか、目を潤ませる担任に、華古は小さく呟いた。
「自分を、捨てないからですよ。」
だから、1人で盛りあがって、空振りして…虚しいし、嘲われている事も、わからない。
自分を捨てないで、変な個性を持っているから…。
『ばかじゃないの?』
『一生夢でも見てれば?』
ヤメテ。
「イライラするなぁ…」
「え?セラちゃん?」
ダンッ。とドアを殴って開けて、セラは下駄箱へ急いだ。
「私がとっくに捨てなきゃいけなかったものを…持ってどうしてそこまで生きていけたのよ。」
黒いローファーを履いて昇降口を出た。
アノセンセイは、嫌いじゃないけど。
「スキじゃない。」
サクラの樹が続く正門前を通りすぎ、ニナと寄るはずだったコンビニの角を曲がって、ずっと走った。
息が乱れてもいい。
このまま息ができなくなって、死んでしまえばいい。
それでも、自分の意思とは裏腹に、酸素を求めて激しく呼吸する自分の身体。
立ち止まって、
膝をつく。
「どうしてこんなに、虚しい?」
家は目の前にある。
鍵を開けて、中に入れば、少なくとも学校よりは落ち付く筈なのに。
スクールカウンセラーは『思春期だからね、いろんなことを考えるんだ。』それだけですませた。
わかってるわよ、ほんとうは。
大人達は、みんなこんな時期を過ごしてきたから、いつか終わってしまう事を知ってるから、『思春期だから』で片付けてしまう。
でも、覚えていないの?
アノころ、思春期だったころに感じた世界を、人間を。
大きくなって、見えてしまうのはいやだ。
知ってしまった大人にはなりたく無い。
その内に自分の中で、綺麗に解決されてしまうのはイヤだ。
必死に足掻く自分が、虚しい。
「無駄なくせに…」
セラは自分に言い聞かせる様に呟いて、立ちあがった。
分かってる いつか この思いは 風化されてしまう。
END