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第7回中高生3000字小説バトル Entry1

神様。

カミサマ………。

カミサマなんていない。

絶対に。


だって……、

だって一度も私の願い、聞いてくれなかったじゃない。


あの人を……

私の大切なあの人を……救ってくれなかったでしょう?


彼はもういない。





愛華は教会の真ん中で、ペタンと座り込む。

誰も居ない、古びた教会。

光はステンドグラスから差し込める光のみ。

薄暗い教会の中で、天井の十字架が光る。

誰も居ない。

毎日通い続けているが、人に会った事は一度も無い。



『神なんか居ない』

そう唱えるのだけど、ここに来ると何故か落ち着く。

『神なんか居ない』

何回それを唱えただろう。

奇跡なんてないのだと、あの時思い知らされてから……。



床に落ちている小さな十字架を拾い上げる。

そして、それをきつく握り締める。

血がにじみ出るほど強く……。


手のひらを開いてみてみると、血がだらだらと流れていた。

痛みさえ感じない。


あの時、誰も守れなかった。

あの時、独りになってしまった。

あの時、キミを救えなかった。


そんな心の痛みに比べれば……。

痛いとも思えない。



神ハ私ヲ助ケテクレナカッタ。

神ハ誰モ助ケテクレナカッタ。


神は私を苦しめるだけ……。

神は私を苦しめただけ……。

……そんな神居ない方がマシだ。

だから神は居ない。





「カミサマ、もしいらっしゃるのなら……もしいらっしゃるのであれば……私の願いをかなえてください。」

そう何度願った事だろう。



真っ赤に染まった十字架を床に思い切り投げつける。

十字架と共に、赤い血が床に飛び散った。

透明の雫が、頬を伝い床へ落ちる。

その雫は、止まることなく流れ続けた。





もう泣かないって決めたのに。





過ぎてしまったこと、とやかく言ってもなにも変わらない。

死んでしまった人、生き返ってほしいといっても生き返らない。


そんな当たり前のこと、わかっているのに。

認めたくなくて、神のせいにする。

居ないっていってるくせに。


自分は汚い……と思う。





薄汚れた教会の扉が開く。

愛華以外の者の手でその扉が開くのは何ヶ月ぶりのことだろう。


まばゆい光が、愛華の背中に覆い被さる。


光の向うには、眩いほどの金色の髪が靡く。

真っ赤な瞳。

あの日見たのと同じ色。


愛華はそっと金髪の少女の方を振り向く。

少女は無言で愛華に近づく。

表情一つ変えずに。



すごく、悲しそうな目だった。

すごく、寂しそうな眼だった。

私よりずっと……。



少女は愛華の横を通り過ぎると更に教会の奥へと進んでいった。

さっき愛華が投げた十字架に一瞬目をやるがまた前を見つめ、奥へと進む。




彼女は何を祈りにきたのだろう?

彼女は何を求めてきたのだろう?

彼女は何を願いにきたのだろう?




そんな少女の様子を愛華はずっと見つめる。







「ねぇ、カミサマって居ると思う?」






少女はそっと口を開く。

同じ場所をを見つめたまま。

振り返らずに。

突然の事で驚いた愛華は少し戸惑うが、さっきの十字架をもう一度拾い上げ、答えた。



「いない。」



「そう。」




会話が途切れる。

気まずいムードが教会中を包む。

いや、もとから気まずかったが。




「私はいると思う。」



少女はもう一度口を開く。

まだ、一点を見つめたままで。

振り返らずに。

動かずに。



「何故?」



「貴女は何故居ないと思うの?」



少女は愛華の質問には答えずにもう一度問う。



「居ると思った事が無いから。」



答えになっていない答えを述べた。



「・・・・・・・・そう。」



少女はまだ振り返らない。

何を見ているのだろう??

汚れた壁をじっと見つめていた……。






一度も私に奇跡を与えてくれなかったから。

一度も私の願いを聞いてくれなかったから。

一度も私を救ってくれなかったから。








――――神なんて居ないと思う。








「奇跡は自分で作るものだよ。」


少女がまた口を開く。

その言葉は、まるで愛華の心を読んだかのようで。


「わかってる。」



「願いは自分で叶えるものだよ。」


振り向かずに、言葉を続ける。


「知ってる。」



「自分を救ええるのは自分だけだよ。」



「うん。」






わかってる。

わかってるけど……。





止まりかけていた涙が、また流れ出す。


それでも少女は、振り向こうとしない。


十字架を、もう一度強く握り締める。

また赤い物が手から流れ落ちる。

やっぱり痛みを感じない。


少女の言葉のほうがよっぽど痛い。





一番言ってほしかった言葉。

一番言ってほしくなかった言葉。





「じゃあ神は居ないじゃない。」

愛華は、未だに同じ場所を見つめ続けている少女に向かって呟く。




「神は、無力。

 神は、何も出来ない。

 神は、奇跡を起こさない。

 神は、願いをかなえない。

 神は、人を救わない。

 神は、自己満足を得るための物。

 神は、ただそれだけの存在。」




少女はクルッと振り返る。

金色の髪の毛がふわっと靡く。




「神は、自分自身。」



少女は微笑む。

その笑顔はすごく優しくて、

すごく切ない。


そして、すごく悲しい。



彼女の背中に大きな羽が生え、彼女の周りに光が集まりだす。

羽は、彼女の身体を光と共に包み込む。

天使のようで、天使じゃないような……そんな羽。




眩い光と共に少女は消えた。


そしてその瞬間、愛華の意識も消えた。






















気がつけばそこは廃墟。

自分の街。

廃墟となってしまった、自分の街。


失った希望を掘り起こすように、

瓦礫を掘り起こす。



生き残ったのは私だけ。


そんな言葉を振り切って。




奇跡は自分で作る物。

奇跡を起こすのは自分自身。



奇跡を信じて、

キミが生きてると信じて、

荒れた廃墟を掘り起こす。



神は私。

自分自身。



願いをかなえるのも、

奇跡を作るのも、

私を救うのも、


全部私。





そこにある幸せを信じて、

また会えると信じて、

壊れた家を掘り起こす。



瓦礫で切った傷は、すごく痛い。

血が流れる度、痛みを感じる。


心の痛みが少し消えたから。






瓦礫の下から出てきた、見慣れた手。

そっと触ってみると、暖かい。

更に掘り起こしてみると、いつものキミの笑顔。

やっと見つけた。

私の奇跡。







あの少女が、神だったのかもしれない。



今は、神を信じてもいいと思う。



だって…

だって私の願い、聞いてくれたもの。




私に奇跡を与えてくれたから。

私の願いを聞いてくれたから。

私を救ってくれたから。




だから、


今は、神を信じてもいいと思う。









そう。

奇跡を作るのも、

願いをかなえるのも、

自分を救うのも、

私自身。


神は、自分自身。

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