第7回中高生3000字小説バトル Entry2
俺はコンビニでバイトしている23歳の男。名前は木立陽祐。大学を一浪しているので、大学4年生だ。この春からは晴れて社会人になるわけだが、不景気で職が決まっていない。今はコンビニでバイトしているけど、フリーターとかじゃなくてちゃんと職を持って仕事をしたい。特に意味があってやりがいのある職業に就職したい。あと3ヶ月。
「木立君、木立君、ちゃんと補充してくれないと困るじゃないか。お客さんに迷惑がかかるでしょう。」
店長のうるさい説教が始まった。
「木立君、君ちゃんと給料払ってるんだから働いてもらわないと困るんだよ…君、半年経つんだからできないと困るよ。」
俺は最初牛丼屋のアルバイトをしていたが、そこの店長に
「BESのおかげで商売あがったりだよな。ってことでリストラしま〜す!木立、君だよ」
ってなことで首にされちゃってつらいよな。だから、こんなコンビニいるんだ。
「木立君、レジ。お客さん待っているでしょ。てきぱき働いてもらわないと。」
でも、このコンビニにも愛想尽きた。
「この弁当温めますか?」
「サラダ取り除いて温めてくれる。サラダは生暖かいがダメなんだよな。」
サラリーマンの親父が言った。
「そんなサービスしていないんですが…」
と断ったが、
「何、お宅の店ではそんなこともしていないんだ。あきれた。コンビニってコンビニエンス便利って意味だろ。そのコンビニがサービスを売らないって聞いたことがないよ。」
「…」
「もういいよ。あたためなくていい。もう二度とこんな店来るもんか。」
こんな客を相手にすると腹が立つ。あと、客もいた。
「ああ、うまいなこのおにぎり。やっぱりハンターストアのおにぎりはうまいよ。」
ってライバル店のおにぎりの自慢をする客もいる。ここはGet Peaceなのに。まあ俺には関係ないけど。
「おでんもらえますか。あのだしがしみている大根。」
「これですか。」
「いや、それじゃなくて、その隣と隣やつ。」
「これですか。」
「そう、それ。」
「あとは、何かいりますか。」
「いいや、結構。」
「105円になります。からしつけましょうか。」
男は財布から1000円札を取り出し、5円を探しながら言った。
「からしも頼む。」
「はい、900円のおつりです。」
変わった客だな。大根だけのために来るか普通。
今、私が大根だけ買いにきたわかった客だと思ったでしょ。」
男は鋭いとことを突いてきた。
「いいえ、思ってません。」
男は俺を疑いながら話し始めた。
「昔一軒の屋台のおでん屋だったんだよ。私はそのおでん屋の常連でね。いつも会社帰りに大根を食べに寄ってね。その大根の味が格別でね。」
俺は話に興味がなかったので真剣に聞かなかった。
「そこの店主がホントに頑固親父で、天候が変わったりしたらおでんの味が変わるとか言って、店を出さないんだよ。それだけおでんに対する愛情がこもっているんだろうけどね。」
と男は買った大根だ冷めるのを気にしないぐらいに語った。
「そのおでん屋は今はもうなくなったけど…」
男は辛そうに言いかけた。
「それでどうしたんですか。」
俺は何気に問いかけてみた。
「この大根の味がそれと同じなんだよ。」
男は言いながら大根を口にした。
「うまい。この味は忘れられない。」
俺はそのおでん屋が売っていたものは、コンビニおでんと同じほどのレベルなんだと思いあきれた。
「ここに…」
男は言いかけた。
「はー。」
俺は不思議に思った。
「ここにそのおでん屋が16年前にあったんだよ。」
そのとき店長が裏から出てきた。
「あっ、山中さん。」
男は叫んだ。
「山中さんだよね。16年前ここでおでん屋をやっていた。」
男は泣きながら喋った。
「はい、山中ですか。どなたですか。」
店長は不思議そうに言った。
「神代ですよ。山中さん。なぜおでん屋をお辞めに。」
「あっ、父がやってたおでん屋ですか…」
店長は言った。
「お父さん?」
「はい、父が16年前までやってました。その16年前に他界しましたが。」
店長は下を向きながら言った。
「そうかもう亡くなられているのか。よく見れば君はあのときの山中さんより若い。」
男は悲しい声で言った。
「今やおでん屋はありませんが、おでんは売ってます。コンビニおでんだからって味には一切手抜きしてませんよ。たとえチェーン店だからってこのおでんだけは本社従えませんでした。」
俺はいつもの店長とは違う感じがした。そういえば1回も俺は店長におでんを下ごしらえさせてもらってない。しかも季節に関係なく1年中販売している。
「そうか…ありがとう。おやっさんに私にこんなおでんを食べさせてもらってありがとうって伝えてくれるかね。」
「はい、父に伝えときます。」
店長ははっきりと答えた。
「あと、これからもおでんの味を守り続けてくれ。」
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちいたしております。」
店長の挨拶がコンビ二中に響いた。
店長はあとで俺に言った。
「私は親父に反対されたんだよ。コンビニをやることを。親父は私に『おでん屋の息子なんだからお前も一生おでん屋だ。』って。」
店長の頬には涙が流れていた。
「そして私は本社でコンビニ経営の勉強をして働いた。そんなときに当然姉から電話があって親父が危篤と言われ。」
店長の涙は床に落ちた。
「私はすぐに病院に駆けつけた。しかし、そこには親父はいなかった。もう亡くなってたんだよ。親父は手に紙を持って死んでいった。その紙にはおでんの作り方が書かれていてね。あの親父が私のためにレシピを書いてくれていたんだよ。それには驚いたね。」
俺は思った。おやっさんが本当におでんを愛していたことを。
「だから私は、いつも父が屋台を出すこの場所におでん屋を作るって。そして、コンビニおでんでもいいから味を引き継ぐと。そして私は本社にこのおでんの味を認めさせたんだ。10年もかけてね。」
「その努力は無駄じゃなかったんですね。」
「親父は喜んでいるかな。今でも怒っているのかな。俺がコンビニを作って」
店長はそう言って俺に大根を食べさせた。大根にはだしがしみていた。父親のおでんに対する愛情と息子の受け継いだ意思がだしとなって。
そして俺は心に決めた。このおでんを売るコンビニに就職すると…
完