第7回中高生3000字小説バトル Entry7
『これは あなたが さがしていた かぎです。』
B5のルーズリーフの線を全く無視した描き方で、その手紙は僕の元へ届いた。
学校帰り、大して特別なことも無かったけれど何故か僕はポストに手を伸ばした。そして母が買い物好きの為数々のダイレクトメールが夕刊の間からはらりはらりと落ちてきた。
珍しいことに、その手には僕宛の手紙があった。ごく普通のクラフト紙で出来た茶色い封筒には几帳面に貼り付けられた80円と10円切手と、同じぐらい几帳面な字で「木村 義人様」と書かれていた。手紙をもらう経験なんて無いし、内心おかしいなとは思っていたけれど、人間だれでも嬉しいときは素直に喜ぶべきだと思うね。
「ヨシ!帰ってきたんなら声かけなさい!」
最近はずっとこうだ。何でいちいち居間に顔出して、学校の話をしなきゃならないんだ?僕はんーともおーともつかない声で、返事をしたものの自分の部屋に引っ込むことにした。
スポーツバックを端っこに投げて、靴下をその辺りに放り投げる。片手でその手紙の封を切ると、中には例の文面と少々錆びているもののまだ使えそうな鍵が、素足の甲にあたった。
「あ?」
封筒の裏を見ても、差出人は書いてないし、文面もそのままだ。
「イタズラかよ。」
期待していた自分が、なんかダサクて僕は鼻の頭をかいた。どうすることも出来ない。いきなりこんな鍵送られてきても困るし。急にやる気というやる気が全部どっかに帰って行って、制服のままベッドにつっぷした。
「ヨシー。パーカーかして。」
アホみたいな声を出してやってきた、アホみたいな顔をした姉が肩まで伸ばした髪の毛をいじりながらやってきた。今現在の悩みはこのアホ姉について。
「やだ。」
「あー?なんで。いいじゃん、借りるよ。」
そういって勝手にタンスをいじり始めた。どうせ勝手に着るんだったら聞く必要は無いと思うのに、と呟くと
「あんたさー、汗くさいの!風呂入ってきてよ!」
などと残酷なことを言う。酷い。
ちなみに僕が姉に服を貸すのをためらうのは、服に姉の香水の匂いだとかがつくからだ。別にいい香りだとは思うけれど、姉がいつもそこにいるだなんて考えると、もう寒気がとまらなくなってしまう。
「じゃあね、アリガト。文通始めたの?」
いまだ握り締めていた封筒を見ると、うさんくさそうに言った。
「それとも懸賞?はずれたのね、その様子と臭さからすると。」
「臭い臭い臭いってうるせーよ!」
枕を投げつけると、昔はかわいかったのになどと呟いて出て行った。
そして人間の記憶というものは都合のいいもので二週間たち僕は、あのおかしなイタズラの手紙のことを忘れかけていた。
そんなある日。
目覚めが悪い朝だ。仕方ないのだけれど、夜遅くまでテレビを見ていた。その後適当に今日の追試の勉強もやってそのままイスで寝たのだから。母が元気な声で「なっちゃん起きなさい!」と言っている。そんな母にあわせるハイテンションな姉の姿に涙した。いや、マジでね。
足音が近づいてきたかと思うと、途端
「ヨシ!起きなさい!・・・あら、勉強してたの?テスト本番もそれぐらい すればいいのにね。まぁ、勉強することは悪くは無いわ。」
一方的にしゃべった後、
「おはよう。」
とニッコリ微笑みかけてきたので、脱力しながらもおはようと微笑みを返した。学校の友達に知られたら一生馬鹿にされる母親だろう。悲しい。
パタパタと軽快に階段を下りて言った後、僕の目の前にはおかしな物体がこちらを睨み返したいた。
「オハヨウ」
喋った。
「なんだ・・・この鳥。」
「ナンダ!ナンダ!」
黒い体をした鳥は、まさしくテレビでよく見かける九官鳥だった。多分。
窓を開けっぱなしにしていたからだろう、誰かの飼っていた鳥が逃げてきたのかもしれない。しばらくうさんくさく、鳥を眺めた後害は無さそうなので無視をしてそのまま居間に下りていった。
「母さん」
「何よ。なっちゃん、遅れるわよ!」
「あのさ、部屋にさ九官鳥いたんだけど。」
「九官鳥?どうしたの、飼ってきたの?鳥かごは?あんた一言相談しなさいよ。」
姉が、醤油を取れと目で促す。
「違う、窓開けてたから入ってきたんじゃないかと思って。」
「あら。じゃあヤクトクじゃない。そのまま飼っちゃいなさいよ。」
無茶苦茶を言う母親だと、僕は再認識をせざるは得なかった。
「いいなー。ヨシ、九官鳥いるのー?」
「いらないよ。だから返してやったほうがよくない?」
「勿体無い!私貰うわ。いいでしょ?母さん。」
「面倒見切れずにそのまま鳥を餓死させなければね。」
かくて、無茶苦茶な親子により九官鳥は捕獲されたのだった。
新聞を取りに言ったときに再び僕宛に手紙が届いていた。相変わらず几帳面に書かれた住所に名前。そして今回の切手は80円だった。
「またきてら・・・。」
そのまま玄関先で手紙の封を切ると、そこには写真と手紙が入っていた。
『突然の手紙申し訳ありません。私の名前は氏浦美佐です。木村君のことは一ヶ月ほど前に知りました。よかったら、私の相手をしてくれませんか?』
新手のイタズラだろうか。しかも趣旨が纏まっていないし。
けれど、写真を見て驚いた。
少女の顔は僕の姉、木村 夏絵そのものだったからだ。多少幼くそしてえくぼとほくろもあり全体の印象は違うけれどそことなく似ていた、ただ姉の字ではなかった。姉はすべてアホだったから漢字もロクに使えないし、字もふざけている。
そのとき、ぼくの鍵は音を立てた。
こんな世界のどこかに、寂しい者同士に鍵を配る会社がありました。
その会社は世界中の子供たちを幸せにしたいという、一人の大学生の女性によって創立されたとか。通称はNP。
鍵によってめぐり合わされた二人は必ず幸せになれました。
そして彼女は彼女の弟がひそかにシスコンだったことも、知っていたそうです。