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第7回中高生3000字小説バトル Entry6

雨の日の出会い

「いれて、ほしい、の」
 変なアクセントのついた声が、僕の耳にはいった。
 僕は、声の主のほうをふりかえった。
 雨のなか、コンビニのわずかな屋根のところに、その少女はいた。
 この季節にしては、少し肌寒そうな、薄手のセーターに、青いヒラヒラしたスカートをはいていた。歳は、十歳ぐらいだろうか。
 髪や目の色素が薄く、灰色がかって、生粋の日本人にはあまり見えなかった。
「聞こえ、なかった?あの、ね。傘、いれて、ほしい、の」
 やはり、少しばかり変なアクセントの日本語だ。
 僕は、不思議に思いながらも、言葉をかえした。
「あのさ。僕、きみとどこかで会った?」
「会った、こと、ない」
「じゃあ、なんで?知らない人に、普通言わないだろ」
 少女は、一歩前にでて、また不思議なアクセントで話した。
「だって、ワタシ、はやく、帰り、たい」
灰色の目が僕を見据える。
「・・・・いいけどさあ。僕、きみのこと、ホントに知らないよ?家はどこなの」
「もう、ちょっと、向こう。行こう」
 少女は、早々と僕の傘のなかにはいると、大通りの方を指さした。

 雨がいっそう激しくなってきた。
 五分ほど歩いたが、少女は何も言わない。
 僕は、思い切って話しかけてみることにした。
「きみの家、もう近い?」
「ううん。もう、ちょっと、遠い」
「そっか。きみ、名前はなんていうの?」
「ツ、バ、サ」
 ツバサ・・・・。男の子みたいな名前だ。
「僕は、晴樹っていうんだ。きみ、日本人なの?」
 ツバサは、しばし考えこんでいるようだった。
「違う、と、思う。おかあ、さん、髪の毛、薄い、色」
 ハーフなのか。
 僕は、僕なりに解釈をしてみた。
「それ、に。ちょっと、前は、ニホンじゃ、ないとこ、住んでた」
「そうなんだ。どこ?」
 ツバサは、また考えこんでいた。
 少し、難しい質問だったかな。
「確か、ね。アメリカ、の方」
 だから、変なアクセントなのか。日本語にはなれていないのか。
「ニホンゴ、少し、むずかしい、の。だから、今、練習、してる」
「そうか。いつか、うまく話せるようになるさ」
「うん・・・・。あ、もうすこし、で、うち」
 ツバサは、少し早足で駆けていった。
「ツバサ、何歳?」
「んとね、十歳、かな」
 予想どおりだ。僕より六つも下だ。
「ワタシ、こんなに、知らない、人と、おしゃべり、したの、はじめて」
「はは。僕も、知らない小さな子とおしゃべりしたのははじめてかな」
「ワタシ、ね。雨、大好き、なの」
「そうなの?」
 ツバサは、少し笑って言った。
「雨、冷たいし、気持ち、いいの。でも、びしょぬれ、は、嫌い」
「そうなんだ」
「あと、あと、アメも好き、なの。おいしい、やつ。それっから、桜のお花、も、好き」
 ツバサは、今度はウキウキしたような笑顔で言った。
「今度、ね。誕生日、なんだ、よ。日曜日、なの。プレゼント、たくさん、もらう、の」
「そうか。じゃあ、僕もあげるの?」
「ほしい!ほしい、ほしい!くれ、る?」
「う〜ん・・・・・できたらね」
 会って一日の女の子に誕生日プレゼント、など非常識きわまりないが、こんな喜んでる子に「あげない」とは言い難い。
「ハルキ、うれしい、よ!おかあ、さんにも、ハルキの、こと、言っておく、ね!」
「ええ!?い、いいよ、別に・・・・・」
「お友達、たくさん、つくれって、おかあ、さん、おとう、さん、言った」
「う〜ん・・・・それもそうだけど」
「ね、ね!約束、約束、だよ」
 ツバサは、声のトーンを思いっきりあげて、駆け足で走った。
 僕もあわてて後を追う。これじゃ、傘にいれた意味がない。
「あ。ここ、ここ、だよ」
「へ?」
 ツバサがふいに立ち止まって、指さした。
 おったまげたというのは、こういう時につかうのだろうか。
 豪邸だ。ものすごい豪邸だ。庭は、うちの家の面積より絶対に広い。広すぎる。庭だけで僕の家がはいってしまう。
「じゃあ、ね!約束、ゆび、きり」
 ツバサが小指をだした。
 僕は、少しだけ笑うと、小指をだした。
「ゆーびきーり、げーんまーん!ばい、ばあい」
 ツバサはそう言って、インターホンをならした。
 インターホンから女の人の声。どうやら、母親らしい。
 僕は、ゆっくりと家路を急いだ。
「アメと桜・・・・・」
 ひとりごとのようにつぶやいた。
 たくさんのアメと、桜の絵はがきでいいかな?
 女の子の趣味はよく分かんないけど、まあそんなものでいいだろう。何でもよろこんでくれそうな気がした。
「あ・・・・・」
 僕は、途中である重大なことに気が付いた。


「あんなでかい家の子にあげるものだぞ・・・・・。いいのか・・・・・?やっぱ・・・・・」

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