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第8回中高生3000字小説バトル Entry1

人を幸せにする歌姫の話。

昔々、あるところに歌声で人を幸せにする力を持った歌姫がおりました。
彼女は大層優しく、自分がそんな力を持っているということを知ってからは、
世界のあちこちを唄いながら旅して周り、沢山の、本当に沢山の人を幸せにしてきました。

人を幸せにすると、その人の不幸が彼女自身に降りかかるということを知りながらも、
彼女は自分以外の人々の幸せを願って止みませんでした。

歌姫は、淡い栗色で少しウエーブのかかった柔らかい髪の毛を風に揺らせ、
たくさんの痛みを背負いながらも笑顔を忘れずに瞳を輝かせ、
ある町の大きな木の下で歌っていました。
歌姫の、良く通る透き通った声は風に乗って町じゅうを駆け巡り、
彼女の歌を聞いた町の人の心は幸せに包まれるのでした。

一方で、人々の不幸を吸い取った冷たい風は、歌姫の細くて小さな身体に
容赦なく吹き付け、彼女の体力を削っていくのです。
それなのに歌姫は顔色一つ変えず、両腕をいっぱいに空に向かって広げ、
木の葉のざわめきを背に受けて、一日中歌いつづけました。

夜になると、歌姫はぐったりと疲れ果ててしまいます。

彼女は生きるため、人々を幸せにする為に、一日どれほどの力を使っているのでしょうか・・・・。
それでも健気に一日一日を強く生きる健気な歌姫の姿を、
空のうえから神様が密かに見つめておられました。

山の向こうに朝日が昇り、また朝がやってきました。
歌姫はまた、重い身体を起き上がらせ、新しい町へ歩き出しました。

楽しそうに、鼻歌を歌いながら。

だけど歌姫の細い肩には今まで幸せにした人々の苦しみが重くのしかかっているのです。
それなのに歌姫は 笑って・・・・










 

 

 

 




倒れたそのときも、歌姫の口元にはうっすらと笑みが浮かんでいました。
哀しいくらい、微かに歌姫の唇は唄いなれた優しいメロディを奏でました。
最後の力を振り絞って、歌姫は幸せを振りまきました。
世界中の人が空の彼方から聞こえるメロディに耳を傾け、涙し、笑いあいました。

歌姫は本当に沢山の人を幸せにして、瞳を閉じました。
その瞳が開くことはもうありませんでした。

空の上から歌姫のそんな哀しい姿を見ていた神様は、
優しい歌姫に最高のプレゼントを贈りました。

動かなくなった歌姫の体が光に溢れ、きらきらと輝いて散り散りになって空に昇っていったかと思うと、
そこに天使になった歌姫の姿が現れたのです。

その顔は相変わらずの笑顔に満ち溢れ、やさしい瞳も、その歌声さえ変わらず、
歌姫は天使になったのです。

ただ、一つだけ変わったことは、
歌姫がどんなに人を幸せにしても自分が不幸になることがなくなったんです。

歌姫は驚き、空を見上げてにっこりと笑い、唄いながら空へ上がっていきました。


その瞬間。
世界中で起きていた戦争も貧しさも全てが消えました。
虐げられていた動物がみな解放されました。
この世に生きとし生けるもの全てが平等に笑える世界になったのです。



今も歌姫は幸せの天使としてこの世界を見守っています。
でも少しだけのどの調子を崩して、幸せを播くことが出来ないまま泣く泣く見守っています。
きっと、また歌姫は帰ってきて、この世界を平和にしてくれるだろうって・・・・
私は想います。

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