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第9回中高生3000字小説バトル Entry7
空は、今にも泣き出しそうな曇天だった。
カノジョとの待ち合わせ。ここは駅。待ち合わせ場所までは走れば10分てとこ。
待ち合わせ時間までは、あと15分…。急がなきゃな。
そんなことを考えていたときだった。
「あのっ…!!」
声がした。女の子の声。
反射的に振り向くと、俺と同い年…18くらいの女の子が、真っ赤な顔で立っていた。
「何?」
にこっと笑ってやる。愛想笑いとでもいうのだろうか。とにかく、急いでいる。
「あの…あなた、いつもこの駅通りますよね…?」
「ああ、そうだけど。」
バイトに行くときに、乗りかえで使う駅でもあった。
「私…ずっと貴方のことを見てました…。もし良かったら…お付き合いしてもらえないでしょうかっ…!!」
元から真っ赤になっていた顔が、噴火でもしそうなほどに赤みを増す。
…告白か。
さほど珍しいことでもない。今のカノジョにだって、告白されたんだから。
「ああ…ゴメンね。」
ちょっと困ったような笑みを浮かべる。
「気持ちは嬉しいんだけど、俺、カノジョいるから。」
とたんに、曇天だった空から光が放たれた。
いや、正確にいうと、雷が落ちた。
「つまり…お付き合いは…してもらえないってことですか…?」
「あ〜…まぁ、そゆこと…。」
「っ…っく…っく…ふえ…」
泣き出した。
…参ったなぁ…。
すると。
ざーっと言う音が、外から聞こえてきた。
「うわ、雨だ。」「どしゃぶりじゃないか?」
さっきまで曇天だったはずの天気が、一気に崩れた。
ポケットから振動を感じて、取り出してみる。
…カノジョからのメールだ。
雨が降ってきたから、待ち合わせ場所変更。
女の子を見ていると…ずっと泣いてる。
それどころか、いっそう泣き方が激しくなった。
「私の…っく…気持ちは…っ受け入れられない…っって…ふぇ…うわぁぁぁっ!!」
ドカーン!!ピシャーン!!
雷。
雷…。
そして。
「うわ…雪!?」「何で!?今7月だぞ!?」
雪。
何でだよ…。
「私のせいなんですぅううっ!!うわぁぁぁっ!!」
…は?
何故にコレが貴女のせいなんですかお嬢さん。
「私…変な体質があって…私が泣くと雨になって…冬になって…笑うと晴れて…!! 家族の女性皆がそうで…!! 私昔から悲しくて…。そんなときあなたに会って…見てるだけでしたけど、凄く嬉しくて…ずっと晴れてて…でも、今あなたにふられて…悲しくて悲しくて…っ!!」
笑うと晴れて。泣くと寒くて。雨で。
「氷河期…来るかもしれなくて…っ!!でも止められないくらい悲しくて…っ!!」
…氷河期。
そういえばどんどんさむくなってくる。つららとか出来始めてるし。
嘘だろ…マジかよ…。
「お…おい…泣き止めよ…。」
「駄目です…悲しいんです…!!どうしても泣きやめません…っ!!」
信じられねぇ。
「わかったよ…!!とりあえずもう一回話聞く!!だから泣き止め!!」
「…本当ですか?」
返事の代わりにコクリとうなづく。
氷河期になられちゃたまらないからな。
場所を変えた俺達は、とりあえず近くのファーストフードに入った。
彼女はまだ泣いており、外は小雨がぱらぱらと降っていた。
カノジョとの待ち合わせ時間、大幅オーバー。遅れると連絡しておいた。
「私の母もそうでした。祖母もそうなんです。」
いきなり彼女はそうきりだした。
「代々生まれた女児に受け継がれる能力…天気。本当は、コントロールができるはずなんです。」
「…。」
「私はまだ未熟者で…感情の通りに天気が変わってしまう。母も祖母も、それは上手に天気を操っていたのに…。」
また声が震えてきた。
慌ててさっき買ったコーヒーを差し出す。
「とりあえず飲んで。」
「ありがとうございます…。」
一口飲んで、目を潤ませた。
「貴方を見つけたのは2ヶ月前くらいで…。そのときから、天気の、感情のコントロールがもっと下手になりました。見るだけで、緊張してたんです。ドキドキして、止まらなくて…天気は曇るし…。」
…ここのところ晴れないと思っていたら。
「でもさぁ…天気予報とかは? 感情で一々変わってたらどうしようもないじゃん。」
「あれはうちに気象庁の方が天気を毎日聞きにくるんです!! …世間にはもちろん伏せてますけど。」
「…。」
まじかよ。
「貴方のことは…あきらめます。彼女がいらっしゃるんですもんね。私…キッパリとあきらめます。」
「そう…ごめんね。」
「いいえ…でも…。」
彼女は俺をちらっと見ると、冷たく笑った。
「氷河期になったらごめんなさい。」
その笑顔に、ぞっとした。
店内が寒くなっていく。
外を見ると、吹雪になっている。
客が騒ぎ出した。
さっきよりも、激しく泣いていたさっきよりも、よっぽど酷い天気だ。
「…氷河期になったら…死ぬときは一緒ですね。」
もう一度、彼女は俺に笑みを向けた…。
1ヵ月後。
俺はカノジョを待っていた。
あの、悪夢のような7月のある日に待っていた彼女ではない。
悪夢の原因を作った奴だ。
前の彼女は、別れる原因をしつこく聞いてきた。
周りも、しつこく聞いてきた。
だけど、仕方ないじゃないか。
『地球を氷河期から守る為』
なんて、誰が信じる?
俺はまだ死にたくないし、皆だってそうに決まってる。
俺は良いことをしたんだぜ?
あの日から、夏らしい晴れた日が続いている。
彼女は笑ってばかりだ。
そろそろ、何か冷たいことを言って、泣かせなくてはいけない。
そんなことを考えていると、カノジョが走ってきた。
ごめんなさい、と手をあわせながら。
俺は笑顔で迎え入れる。
今日もいい天気だ。
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