第59回体感バトル詩人部門

エントリ作品作者文字数
01音としての言葉鈴木457
02あさい夢埴輪84
03夕暮れの葬列安東芳治136
04よあけ飛鳥
05297
06少年のあなたに捧ぐ白井 雲178
07しとぴっちゃん永愛140
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ01  音としての言葉     鈴木


それは
思考回路をとおり
何度も何度も
濾過を繰り返し
蒸留し
飲み込み
そしてもう一度
濾過、蒸留をして
そこで初めて
静かに流れ出す

時には自分では気付かないうちに
剛速球のデッドボール
すっぽぬけのフォークのように
コントロール出来ずにたたきだされ
無関係の人間に突然襲いかかったり
誰にも届かずネットを揺らしたりすることもある

だが
それが
言葉として存在することは一瞬たりともない

自分のなかで思考している間
そこにあるのは
決して存在する事のない個性
言葉は存在さえもしていない

そして
口から放たれた瞬間
それは自分のものではなくなる
だれかのものになるのでもなく
ただ音として
さまよう

ただ音が音としてさまよっているだけなのだ
それを放った瞬間から
それは、音として存在するだけになる

その音を人々は
選び
受け止め
飲み込み
吸収する
そして
時には背後からぶつけられる

そして
音が誰かに選ばれた瞬間から
それは音ではなく、
選んだ人間の
感情
思想
思い出
歴史
そして
新たな個性に
変わるのだ。

コトバも欺瞞も個性も
存在しないのだ
故に
誤解なんてものはどこにも存在しない

存在するのは音だけ







エントリ02  あさい夢     埴輪


あさい夢
おぼれそうな
あわい夢
染まりそうな
こわい夢
つまづきそうな
冷めた夢
眠りそうな

目覚まし鳴っても
夢は夢
わかめがもえる海の底
うみうしまくら安眠枕

おもりをつけて
電気を消して







エントリ03  夕暮れの葬列     安東芳治


   夕暮れの葬列                 安東芳治

夕暮れの葬列は

轢かれた蟲の屍骸の様に荘厳
ゴシックビル建築物の
荒れた頬に
私は口付けする

私は通り過ぎる
時は

愛など
関係ないのです

アスファルトの乾いた風は

嘘で

一杯なのです

海へ行くの

鉛色の

ひょっとしたらもう

ないかも知れない







エントリ04  よあけ     飛鳥



そとがあかるくなって
とりのうたがきこえる

くるまのおともふえて
まちのあかりがきえる

なれたきのうとわかれ
しらないきょうがくる

つきも
ほしも
あかりも
くうきのにおいも

じゅうにじすぎたら
ばいばい

ひとりのよあけ
すなあらしのてれび
ごぜんさんじのゆううつ



ないちゃいそう

    







エントリ05       み


ほそいこころはのばされて、いつかうすいかわになり、ひもになり、ひとつのせんいになっておともなくちぎれてしまうのだろう。
ただばくぜんとしたふあんとあせりといらだちと、どこへいくでもないわずかなきぼうが、くるくるとからまわりしている。
いつかおわれとねがいながら、いつのまにかぜんぶおわっている。結局は何もしないまま。
またひびはすぎて、かわらないじぶんがぼうのようにたっていて、あしたをみつめているけれどひとみにうつっているのはちゃいろのつちばかりだった。
ほそいこころはおくびょうで、なにをしていいのか、なにをすべきなのか、わかっているつもりになって、それから過去をのぞき、なにもかわってないとなげくのだ







エントリ06  少年のあなたに捧ぐ     白井 雲


誰にも私のガラスのハートは
見えることは無い
透き通りすぎて
傷つきやすくて
すぐに割れてしまう

ましてやいつでも
頑丈な宝箱に鍵を
厳重にかけて
閉じてあるから
誰にも見えることは無い

例えばあなたが
私の宝箱の鍵をこじ開けようと
必死になったとしても
開く前に割れてしまうから

でも、少しだけガラスのハートが
微かに揺れて
密かな鈴の音のような
音を立てた
あなたには決して聞こえないほど
小さな恋する心の音を







エントリ07  しとぴっちゃん     永愛


アスファルトの湿った匂い 
生暖かい空気が身体にまとわりついて

紫陽花の葉 雫がポトリ カタツムリの背の上に

窓を叩く雨音 ベッドの中 子守唄のように
耳障りな車の騒音 かき消して 静寂

張り付いたTシャツ
回る傘 濡れたランドセル 懐かしい記憶

日焼けした肌を 雨で冷やして
乾いた体に 深呼吸



※作者付記: 傘をさしているのに、どうしてもランドセルが
濡れてしまった事・・・ないですかね?