それは思考回路をとおり何度も何度も濾過を繰り返し蒸留し飲み込みそしてもう一度濾過、蒸留をしてそこで初めて静かに流れ出す時には自分では気付かないうちに剛速球のデッドボールすっぽぬけのフォークのようにコントロール出来ずにたたきだされ無関係の人間に突然襲いかかったり誰にも届かずネットを揺らしたりすることもあるだがそれが言葉として存在することは一瞬たりともない自分のなかで思考している間そこにあるのは決して存在する事のない個性言葉は存在さえもしていないそして口から放たれた瞬間それは自分のものではなくなるだれかのものになるのでもなくただ音としてさまようただ音が音としてさまよっているだけなのだそれを放った瞬間からそれは、音として存在するだけになるその音を人々は選び受け止め飲み込み吸収するそして時には背後からぶつけられるそして音が誰かに選ばれた瞬間からそれは音ではなく、選んだ人間の感情思想思い出歴史そして新たな個性に変わるのだ。コトバも欺瞞も個性も存在しないのだ故に誤解なんてものはどこにも存在しない存在するのは音だけ
あさい夢おぼれそうなあわい夢染まりそうなこわい夢つまづきそうな冷めた夢眠りそうな目覚まし鳴っても夢は夢わかめがもえる海の底うみうしまくら安眠枕おもりをつけて電気を消して
夕暮れの葬列 安東芳治夕暮れの葬列は轢かれた蟲の屍骸の様に荘厳ゴシックビル建築物の荒れた頬に私は口付けする私は通り過ぎる時は愛など関係ないのですアスファルトの乾いた風は嘘で一杯なのです海へ行くの鉛色のひょっとしたらもうないかも知れない
そとがあかるくなってとりのうたがきこえるくるまのおともふえてまちのあかりがきえるなれたきのうとわかれしらないきょうがくるつきもほしもあかりもくうきのにおいもじゅうにじすぎたらばいばいひとりのよあけすなあらしのてれびごぜんさんじのゆううつないちゃいそう
ほそいこころはのばされて、いつかうすいかわになり、ひもになり、ひとつのせんいになっておともなくちぎれてしまうのだろう。ただばくぜんとしたふあんとあせりといらだちと、どこへいくでもないわずかなきぼうが、くるくるとからまわりしている。いつかおわれとねがいながら、いつのまにかぜんぶおわっている。結局は何もしないまま。またひびはすぎて、かわらないじぶんがぼうのようにたっていて、あしたをみつめているけれどひとみにうつっているのはちゃいろのつちばかりだった。ほそいこころはおくびょうで、なにをしていいのか、なにをすべきなのか、わかっているつもりになって、それから過去をのぞき、なにもかわってないとなげくのだ
誰にも私のガラスのハートは見えることは無い透き通りすぎて傷つきやすくてすぐに割れてしまうましてやいつでも頑丈な宝箱に鍵を厳重にかけて閉じてあるから誰にも見えることは無い例えばあなたが私の宝箱の鍵をこじ開けようと必死になったとしても開く前に割れてしまうからでも、少しだけガラスのハートが微かに揺れて密かな鈴の音のような音を立てたあなたには決して聞こえないほど小さな恋する心の音を
アスファルトの湿った匂い 生暖かい空気が身体にまとわりついて紫陽花の葉 雫がポトリ カタツムリの背の上に窓を叩く雨音 ベッドの中 子守唄のように耳障りな車の騒音 かき消して 静寂張り付いたTシャツ回る傘 濡れたランドセル 懐かしい記憶日焼けした肌を 雨で冷やして乾いた体に 深呼吸
※作者付記: 傘をさしているのに、どうしてもランドセルが濡れてしまった事・・・ないですかね?