第63回体感バトル詩人部門

エントリ作品作者文字数
01おとぎ話の迷い道千音152
02願い時雨80
03無題その3花子
04一人分の月亜唯夢235
05あなたへcyamako
06きみのかげ飛鳥64
07cross永愛103
08罫線ノート山本154
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ01  おとぎ話の迷い道     千音


絵本の登場人物は いつも
笑っていた

主人公でなければ
友達や 家族も 設定されやしない

詳細が存在しない世界で
生きている

それでも 良い人なんて言う
曖昧な箱の中

いつも 笑ってた
僕は 独りなんだって

気付いてなさそうな顔で
精一杯 遊んでる

君は 全部 決まっているじゃないか
目で話しかけられる 昼下がり

私は 幸せなのかもしれない







エントリ02  願い     時雨


いきたいです
あなたのいる世界へ

いきたいです
あなたのいる世界で

いきたいです
あなたの傍へ

いきたいです
あなたの傍で

いきたいです
あなたと一緒に

いきたいです

それが私の願い









エントリ03  無題その3     花子



わたしは夫に捨てられたのです

夫にとってそれがどんなものであったのか

別れてから私にもよく分かるようになった


どんなことがあっても夫を愛し

二人の生活を大切にして生きていく

と私は思っていた


それなのに

私は思いもかけず

他の人と素っ裸で寝てしまった


わたしって、なんだろう?







エントリ04  一人分の月     亜唯夢


ひとりには広すぎて ひとりでは長すぎて
二人では足りない
一たす一が二にならない足し算は
かなしい

月のようにみちたりることを忘れた
減点方式の日々のなか
感じることのできる幸せは
どんな形をしているのか

「いつが一番幸せなんだ」という問いに
「満月だよ」とあんたが答えたら
明日は窓を黒くぬりつぶそう
今日は宵待ち月だ

明日であんたはみちたりる
羨ましいね
黙ったままでいられると
殺してしまいたくなるよ

流れ行く日々のなか
みちたりることのない俺は
二ひく一が一にならない引き算を
いつまでも繰り返してる







エントリ05  あなたへ     cyamako


あの日私が手渡した手紙は
私のほんとうの気持です
あなたの目の前から突然
姿を消したとしても
あの手紙には ひとつの偽りも
なかったのです
あなたにすべてを委ねなかったのは
読みすてられてしまうのが
悲しかったから
私の想いを反古にされてしまうのが
悲しかったから
あなたのまえで笑顔でいることが
不器用な私の精一杯の愛情表現でした
あなたに届かなくても
あなたの心に響かなくても



※作者付記: なにひとつ伝えられなかった想いを言葉にかえて今は遠いあなたに届くように






エントリ06  きみのかげ     飛鳥


喧騒の校庭
長い通学路
夕日の公園
告白の砂場
照れ笑いのベンチ
くやし涙のブランコ
孤独な部屋
焦りのベッド
云い訳のメール


其のどれもに
君の影







エントリ07  cross     永愛



夢は君を 紅に染めて
愛は僕を 暗に染める

漆黒の闇に満ちた心で
奏でるは 君の名前

闇は 光を求め
光は 闇を抱いた

僕が闇なら君は光
闇は光を求める運命

君は強く暖かな 光
僕は優しく諭す 闇

闇と光が 空に交わる・・・。







エントリ08  罫線ノート     山本


何気ない日常を綴ろうと
買って帰った大学ノート
書くような事は何もなく
鉛筆の尻で耳の裏を掻く

今日の事を思い起そうと
必死に脳を巡る血液の音
思い浮ぶのは夕飯の食卓
つい三十分ほど前の一幕

回路が麻痺した記録機能
無かったことと同じ昨日
記憶も意識も殆どが壊死

最初の頁に書き込む事は
決って最後に覚えた言葉
いつも同じ事の繰り返し