第29回1000字小説バトル Entry11
私は貴族、ラファエル妃、
全てを手に入れた、全てを手に入れた、
お金も、地位も、名声も、全てを、
と、思っていた。
代償に、薄汚いラファエルに身を委ね、私を捨てたのよ。
自由も、愛も、なにも、無い。
哀れなアントワーヌ、サヴォアの夕暮れ。
何一つ、残らない、退屈な、この生活。
手に入れたものは全て真夏の夜の夢。
幻影と、幻想の、バファーヌ。
「嗚呼、アントワーヌ、君は何故に其処まで私を苦しめる、
君の美しさは、私をコンプレクスの湖へと突き落とす、
しかも、殺さない、気を失うと、また、君がいる」
「嗚呼、ラファエル、それは、貴方の愛を、全て受け止める、
その度量が私には、備わっていない、そして、貴方の哀しみが、
私を崑崙の山奥へ、篭らせるせいなのよ」
「循環」
その言葉を私は嫌う。貴方と共に、一生を送るつもりなんて、
ほんの一寸、それすらないの。
笑止の至り、私が美しいのではなくて、貴方が醜いの。
そんな私の希望は藝術に触れること、創作すること、
それらにストレスを、全て、当てる、これは、とても、
建設的で、能率的。そして、美しい。中和。
藝術があるから、私は、ここまで来れた。
藝術があるから、私は、耐えて来れた。
私は、愛を、生を、ただ感じたかった。
それなのに、貴方は、ラファエルは、
全てを、灰にした、
藝術に、私を、取られたと思いこんで、
真実の愛は、一瞬で感じられるものではないのに、
ラファエルは、それでしか、感じられないの。
「嗚呼、何故私を見ないのか、何故絵ばかり見ている」
「嗚呼、何故私の、心を察してくれないの?貴方は誰?」
「私は、お前の夫、ラファエル・デュアメル・3世だ」
「私は、貴方の妻、アントワーヌ・デュアメルかしら?」
嫉妬は怖いものね、全てを破壊する、たった一つの衝動、
嫉妬、妬み、ラファエルは私の心を奪ったの、
だから、私は、サヴォアの島で、ラファエルに、復讐を。
ラファエルは、私の全てを奪ったのだから、私は、
ラファエルの全てを奪おうと思ったの。
しかし、ラファエルは、無趣味な男、退屈な男。
彼は、私しかなかった、私しかいなかった、いや、
私以外を見つけることが出来なかった。
ほら、つまらない男。
だから、奪えるものは、私しかなかったの。
ここに、最後の手紙を置いておきます。
元、夫。ラファエルへ。
私は貴族、アントワーヌ・ルノワール。