第29回1000字小説バトル Entry16
二月 三日 クミの誕生日
今日、クミは新しい赤いダッフルコートを着てた。
似合うよって言おうとしたら、
ふられた。ほかに好きなひとがいるって。
帰り道、プレゼントは捨てた。
十一月 十五日
買い物中、赤いダッフルコートを見た。試着したら、クミが傍にいるみたいな気がした。
そんなのは幻。でも、買ってしまった。
僕はまだ、彼女が忘れられない。
十一月 二十日
学校でクミを見かけた。こちらをチラッと見て、友達と何か話してた。
僕のことを気持ち悪いと思っているかもしれない。でも、このコートは着続けてやる。
十一月 三十日
赤のダッフルコートには、まったく意味がない。ただの防寒着。
でも、まだ彼女を好きなのは、事実。
十二月 一日
もう、12月か。一年って短いね。
いつになったら、楽になるのかなぁ。
十二月 十日
図書室でばったりクミに会った。普通に世間話をした。
クミに、
「私も、佐々木君と同じコート持ってるよ。お揃いだね。」と言われた。
ショック
今の彼氏が迎えに来たので、そこで別れた。
クミの中では、このコートは、ただのコート。
僕の中では、クミの分身なのに。
そして、僕はただの友達。
十二月十一日
赤ダッフルを着ることで、まだ、意識してもらえると思っていた。
「気持ち悪い」と、思われても、その方が良かった。
全く相手にされていない今、コートにはもう意味はない。
十二月十八日
いつまでも引きずっていても、しかたがない。
友達に戻っただけだよ。
ストーカーと呼ばれるよりは、いいだろう。
と、自分に言い聞かせたりして。
十二月 二十二日 クリスマス・イブ・イブ・イブ
僕はまだ、この赤ダッフルを着ている。
なんだか、ずっと一緒に戦ってきた戦友のような気がする。
彼女のことを整理したからだろう。少し、チクチクするけど。
十二月 二十三日 クリスマス・イブ・イブ
今日、K高校の子に、声をかけられた。それで、
「通学途中で見かけてから、ずっと気になってた。」
と、言う。理由を聴いたら、
「赤いダッフルコートが欲しくて、そのコートをずっと見ていたら、あなたのことが好きになった。」
だとさ。とりあえず、一人でイブを過ごさなくてすみそう。
うそ、ぜんぜんうそ。すげーうれしかった。
俺のコートはずっと俺の作ったクミの亡霊にされてた。
ずっと意味を無くしてた。
みつけてくれてありがとね。
まだ、彼女のことは忘れてないけど、かなり元気になった。
赤いダッフルも嬉しそうだ。
明日も寒くなれ!