←前 次→

第29回1000字小説バトル Entry17

いくところ

―いつからか、空ばかり見るようになっていた。
毎日毎日、曇りの日でも、雨の日でも、雪の日でも。
空はいつも穏やかに廻って、良いなと思っていた。

自分の生活は、いつも目まぐるしく時間が過ぎていって、
私はよくある受験生の日々を過ごしている。

志望校も何の苦労もなく行けるということが分かっているし、
もっとがんばれば、ランクが上の高校にも行けれるかもしれない。
親や先生はいろんなことを言うけど、私は何だかよくわからない。

―――将来何になろう?

昔から「大きくなったら何になりたい?」と、よく聞かれる機会があったが、
私はてきとーに答えていた。
もちろん本心なんかじゃない。誰だってそうだろう。
少しずつ、世の中のことが分かりはじめて、
「夢なんて簡単に叶わない」ってことが分かっちゃって、
将来の自分の予想がつかなくなっている。

そんな中、私はある日、小学生に服をつかまれた。
小2くらいだろうか・・・・・・? 女の子で、こっちを見上げてニコニコしている。
「な、何?! 」
「おねえちゃん、時間ある?」
時間ある? なんだその子供っぽくない態度はっ! 時間なんか無いっつーの。
そう言いたかったが、ヒマだったのでつきあってあげることにした。

公園のブランコに乗っている。
かなり寒い。小学生の子は、元気に立ち乗りしている。
「ねえ、何なの?」
「うん、あのね、中学校おもろい?」
「んー。まあね。どうかな。」
「あたしね、中学校の制服すきなの。」
「へぇ。」
「あたしね、大きくなったら、看護婦さんになるの! 」

一瞬びっくりした。なりたいの じゃなく、なるの! だったことに驚いた。
「看護婦さん、て、勉強しなきゃなれないよ?」
私の言葉を気にもとめず、女の子ははしゃいで言った。
「だから今お勉強がんばってるんだよ。算数とか、いろいろ」
「そうか。うん、なれるよ」
「ほんとに!? 」
「うん。がんばれば大丈夫。」
その言葉を聞いて、彼女はうれしそうに帰っていった。

どうして私を呼び止めたのか不明だが、今の私には
とても影響される思いを、あの女の子は持っていた。
小さいころを思い出した。私の夢はケーキやさんだった。
本当にケーキ屋さんにはなりたくは無いけど、
自分のこと、もっと真面目に考えることにした。

今はもうほとんど空を見ていない。
進路のことも、友達のことも、ちゃんと真直ぐに見ている。
もう10年後には、
目指した夢を追っていると思った。

←前 次→

QBOOKS