第29回1000字小説バトル Entry23
「いやぁ、船長はん、お久しゅう。」
「また アフリカの三国間航路なんだ。ちょくちょく寄せてもらうぜ。」
「あら、ほんなら また暫く日本へ帰られしませんなぁ。」
「ああ、1年は だめだな。でもこの縄のれんがあるからいいよ。」
「まぁ、嬉しいこと言わはって。」
「こいつ うちの船の新しい二航士、吉田だ。可愛がってやってくれ。」
「赤木です。どうぞご贔屓に。」
「こんな地球の裏側でも おっかさんみたいな日本人が頑張ってると思うと心強えだろう、なぁ 吉田よ。ここの日本料理は大したもんだぜ。」
「まぁまぁ、誉めて頂いて光栄やこと。」
「へぇ、船長、ケープの港には 猛獣料理を出す縄のれんがあるって聞いてましたが、こちらだったんですね。これライオンの角煮って書いてある、こっちはキリンの炊合せだ。本物ですか?」
「ほほほ、ライオンは 獅子に引っかけて 地元のイノシシ肉を使うてます。キリンは ビールとレモンで炊いた牛肉どすえ。」
「なんだ、ギャグっすか。」
「アフリカまで来て、そんな無粋なこと言うたらあきませんえ。」
「象煮なんてのもあったな、おっかさん。」
「へえ、お餅入れてねぇ、ほほほ。」
「でもな吉田、昔は本当に得体の知れん肉を使ってたんだぜ、なぁ、おっかさん。」
「そんなことおへん、ちゃんと市場で仕入れてますえ。」
「その市場が怪しい。俺も 以前 船の調理長連れて買い出しに行ったんだけど、ケープの港から50キロも離れたのサバンナの真ん中でよ、廻りに高圧電流の有刺鉄線が張ってあるんだ。」
「高圧電流ですか?」
「ああ、電流でコロっといっちまった獣を、何でも構わず その場で解体して 肉を売っちまうんだ。残った肉や骨は そこいら辺にばら撒いておくと、肉食獣が寄って来て またイチコロよ。だからそこで売ってる肉は 何だか分かりゃしねぇ。土人の肉も混ざってるって噂だった。」
「えー、ほんとっすか?」
「いややわ、嘘どすえ。」
「所で おっかさん、あの肉 今日は入ってないのか?」
「えっ、あーあれ、最近は なかなか獲れへんそうどすわ。」
「そうか、残念。あんな美味い肉ここでしか食えねぇ。今度あの肉が入ったら是非とっといてくれよ。」
「へぇ、そうさせてもらいます。」
「おかみさん、それ 何の肉なんですか? 俺も食べてみたいな。」
「えぇ、ツーレッグズミート言うて予約してますけど、さぁ詳しいことは。」
「へぇー、ツーレッグズねぇ。2本足かぁ。えーっ、それってまさか!」