第29回1000字小説バトル Entry7
白いキリンはどこに行ってしまったのだろう。
あれから2年経つけれど、一度も遇えないね。きっともう遇うことはないのだろう。それでも僕は探したよ。君がすぐ側に隠れているような気がして。
違うんだ。また助けてもらうためでも、夢を見せてもらうためでもないんだ。ただ、あの時は「ありがとう」と言いたいのさ。
僕は十分知っているつもりだ。夢は夢であり、また現実は現実であることを。
でもあれはただ事ではない。僕にとって突然現れた白いキリンは夢であり、現実であったのだ。
僕は1人うずくまっていたね。黒いものを抱きしめて、震えていたんだ。どれくらいそうしていただろう。ふとあるときから僕は何か暖かい物に包まれていた。顔をあげると、そこにはただ一頭の白いキリンがいた。僕は驚いた。僕を包んでいたのは、物ではなく白いキリンのまわりにあるただの空気だったのだ。それが僕と君の出逢いだったよね。
まるで雲のような薄く白い背に僕を乗せてくれたとき、僕は初めて広い世界を知ったのさ。僕という存在の小ささを知ったのさ。そして、温もりを帯びた風に包まれたとき、僕という存在を愛しく感じることができたんだ。
いつか君は追われていたね。天使と言っても過言ではない君は、僕の罪を背負った。ぼくはただたちつくしていた。君は多くの人間から追われ、そして、僕の前から消えた。
僕は声を上げて泣いた。だがそれは、君が消えたからではなかったんだ。僕は自分のために、僕の罪が消えないことを知ったから泣いたんだ。
君はすべて知っていたんだね。人間が弱すぎる動物だと。だから君は何も話さなかった。ただすごく強くやさしい目をしていた。
僕の罪は消えないって、本当は知っていたんだ。人間は残酷で儚いものだということを。僕はそれを恐れ自分の中で消していたんだ。本当に弱いよ。
白いキリン。僕の罪はこれからも増えていくだろう・・
でも君に遇って僕はそれでも生かされている事実を知ったのさ。
君の存在も夢であり現実であり、また永遠なのだと。