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第30回1000字小説バトル Entry14

クリスマス・イブ

 アパートに帰る道の途中にはケンタッキーフライドチキンがあって、去年の今頃はドライブスルーの順番待ちの車で大渋滞だった。
だから遠回りをして帰ろう。
もしかしたら去年の今頃のように、渋滞の車の列の中に、所在なさげにタバコをふかしている順番待ちのあなたなんか見つけてしまうかもしれなかったから。
 
「家内がローストチキンを嫌いなんだ」
だからうちのクリスマスはいつもフライドチキンだなんて、あたしと二人でご飯食べてるときにしゃあしゃあと言えてしまう、そんなあなたがあたしには信じられなかった。
「ふうん、そうなんだ?でもときどきローストチキン食べたくならない?」
そんなこといいながらそしらぬ顔でワインのお代わりなんかボーイさんに頼めてしまうようになった、そんなあたしも信じられないけれど。
「その理由がおかしいんだよ、家内は」
・・・まだ続くの?その話。あたしはお皿に残ったソースをパンのかけらで拭いて、口に運んだ。
「丸ごとのローストチキンがどうしても」
 そんな話なんか聞きたくないって、あからさまに顔に出せる頃が、きっとあたしにもあったはずなのに、なんて考えながらあたしはお代わりしたワインに口をつける。・・・このワインは甘過ぎたかもしれない。
「赤ん坊が丸まってるように見えて仕方がないって言うんだ」

 黙り込んでしまったあたしのことなんかお構いなしに、あなたはまだその話を続けるつもりなのだろうか?
「なんていうか、変だろ?トラウマでもあるんじゃないかな?」
「そういう神経質なところがさあ、時々ついていけないんだよな。」
・・・それは奥さんへの悪口?
もしかしたらそんな遠まわしに奥さんの悪口をあたしに聞かせて、それであたしに気を使ってるつもり?

あはは。

 いい勘してるのね、あなたの奥さん。
あたしは目の前で食後のコーヒーを飲みながらタバコをすうあなたにではなく、一度だけ会ったことのあるあなたの奥さんに向かって、心の中で話しかけた。
 
 奥さん。
あなたの嫌いなその赤ん坊は、きっと今年の春先に冷たい内診台の上で足を広げている間にどこか遠くへ連れ去られてしまった、あなたのだんな様とあたしの間にできた赤ん坊なのよ。
でもそれはあなたのだんな様も知らないことなの。

 遠回りをするついでに本屋さんに寄ろう。
来年の運勢はどうなのだろう?新しい恋が見つかるかもなんてそんなこと、今さら信じるつもりには、とてもなれないのだろうけれど 。

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