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第31回1000字小説バトル Entry13

或る日ある時

<突然ですみません。実は私、ずっと前からあなたの事が好きだったんです! こんな私で良かったら、付き合って下さい。>
「しかし、また」
 携帯画面の文字を見ながら、百合は鼻から息を出す。口は真一文字状態。
「ラブレターならぬラブメールとは…」
 前と同じ動作をもう一回。息を吸って、もう一回。
「何よ、いーでしょーが! 別に…」
 言うとその画面を時計に変えてそそくさとハンドバッグにしまったのは、百合の親友、恵子だ。彼女は自分の背後に立っている百合を椅子に座っている状態から睨む。
「しかし、あんたがアイツを好きだったのはちょーっと意外だったな。てっきり八田俊二の事が好きなんだと想って…」
 途端、恵子が硬直する。そして携帯の送信メールボックスを見る。
 送り先は…
「近藤尚樹とは、いやー、意外だなーとは想ったんだよ? 私も… うん」
 二人は、半ば呆然と窓の外を見ていた。

 さて、ここで簡単な人物紹介を。
 八田俊二というのは、もう初めて見てもすぐに「モテる男」と想うような、現代風味男高級編ってな感じの男だ。なのに現在は彼女がいないらしい。そう、今のところは。
 対して、近藤尚樹というのはズバリ庶民派元気印の男で、何でも彼の住む町内奥様井戸端大会議では人気ナンバーワンだとか。
 ちなみに、尚樹と百合は同じマンションに住む幼なじみで、中学から一緒の恵子とも仲が良く、たまにメール交換もしている。
 八田俊二とはこの高校で知り合い、半年の片思いの後、強引に携帯の番号を聞きだした。で、「ラブメール」を送る予定… だった。

「しかしまぁ、間違えた奴が尚樹で良かったじゃん。冗談だってごま化せれるし」
 放課後で教室にだれもいない性なのか、多少大声でそういう百合をしり目にしながら、恵子の携帯は音を鳴らす。
 やっぱり、相手は近藤尚樹だ。

 意外と、尚樹は照れくさそうで、嬉しそうだった。
 そんな彼に言い訳する内に、こちらのほうが照れくさくなってきて、気付けば自分でも真っ赤になっている自分が分かってしまって…

 呆れたと言わんばかりの表情で、百合は一人で教室を出た。

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