第31回1000字小説バトル Entry14
カリ・・カ・・リカリカリ・・・・
「この世で、鉄格子とコンクリートに囲まれるなんて経験ができるのは、「囚人」くらいだろうよ。お前らは人間のくずだからな、当然の仕打ちだぜ。」
見回りに来た刑務官はニヤつきながら唾を吐き捨てる。
「すみませんが、隣の壁から妙な音がするので眠れないのです。」
「はあ?」
足音が止まる。
「何を言ってやがる、このくずが!と思うでしょう。そうです、確かにわたくし囚人番号001は明日の午前7:00に死刑が執行され、この世から消えます。だからこそ、今日の夜は安眠したいのです。お願いです、隣の002に言ってやってください。」
「・・・明日死刑執行、安眠、お願い・・・おい!002、001がそう言っているんだがな。」
再び足音が近づく。
カリカリ・・・リカリカ・・カリカリ・・・
「002!・・・壁から離れろ、最後の情けだから、安眠させてやれ。」
・・・・・・・・・
「13年前のことです、一人娘の「ターリナ」が恥辱を受けて殺されました。死体は空き缶のように道路の脇に無残な姿で転がっていました。娘はそのとき16歳です。どんなに無念だっただろうと今でも思います。ただ幸いなことに犯人はすぐに見つかりました。名前は「トニー・ダラス」、過去にレイプ事件を何度も犯している卑劣な野郎です。私は奴が許せませんでした。娘への無念はダラスへの怒りと復讐心へと変わり、いつかこの手で奴を殺してやろうと思って、今日まで生きてきたんです。」
「刑務官さん、どうしたんですか。早く002に伝えてくださいよ。死刑執行と安眠の要望を。」
「・・・・・。」
「・・・怒りと復讐心は今でも心に抱いています。隣の野郎の求めている安眠ですがね。私はこの13年間一度として安眠できた夜はありません。ただそれも今日で終わりですがね。」
刑務官は、胸ポケットから囚人リストを取り出した。
『囚人番号001:本籍「イタリア」・氏名「トニー・ダラス」・罪責「強姦殺人」』
「001!お前、いや、なんでもない・・・。安眠は明日まで待てばいい。そうすれば永久に安眠できるのだからな。」
「え?・・・・・・・」
刑務官は囚人リストを胸ポケットに収めながら、また歩き出した。
『囚人番号002:本籍「アメリカ」・氏名「カール・J」・罪責「詐欺常習」』
「くずには付き合ってられねーぜ、全く。」
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ・・・・・