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第31回1000字小説バトル Entry15

ソレゾレノ、カタチ。

「じゃあねーっ!」ユキコは、校庭を走り抜けていく。
「行かないの?ユキー!」友達が叫んでいる。「ごめんねー。」

ユキコは、この文化住宅の階段をカンカンと音を鳴らして駆け上がるのが好きだ。
2階の西端の部屋をノックもせずに開けて、ユキコは叫んだ。「おまたせ!」
部屋に上がるとすぐ台所に向かった。「大里…。」部屋の主が、ユキコを呼んだ。
「なに?」
「ご飯食べたら、海に行かないか、二人で。」
「ええーっ。ほんとー?」

ドラッグストアでユキコの友人達がコスメグッズを物色している。
「ユキさー、あいつが転校してきてから、変わったね。」
「友情より愛情ってやつ?」「付き合ってんの?」
「ちゃんとコクられた訳じゃないらしーけど。愛されてるのアタシ、だって。」

二人は電車に揺られて、少し離れた海岸の駅に着いた。
砂浜から岩場を伝って、二人は海辺に近づいた。
沈む夕日を見ながら、岩の上に並んで座ると彼は、
いきなり彼女の身体をまさぐりはじめた。
「ち、ちょっと…。」
「お前、どこまで知ってる?」
「な、なんのことよ?」
「おれのことだ。」
「なーんだ、そんなこと。なんでも知ってるよ。」
「なんで、つきまとう?」
「なにそれ。ワタルにはアタシが必要でしょ?」
「なにいってんだ。」彼は拳銃を取り出し、銃口を彼女に向けた。
と同時に、彼の後ろで海面が大きな音を立てて、盛り上がった。
「う、後ろ!」
「それより、自分のことを心配したらどうだ?」
「どーしてっ?一番大切なひとを守りたいってキモチ、おかしい?」
彼は、立ちすくんだ。
「だって今まで、こんなに誰かに必要とされたことないし、
誰かのために何かをしてあげたいって思ったことも、初めてだし…。」
彼は銃口を少し右に逸らして、引き金を引いた。
「そこに倒れていてくれ。」
「どういうこと?」
「俺は、愛するものを守るために、戦いに出なければならない。
お前はここで、死んだことにしてくれ。」
「やだ、アタシも一緒にいく。ワタルを守る。」
「だめだ、大切な家族や友人がいる。」
「でも…。」
「動くな!」彼の後ろで、海面から黒い筒状のものが突き出ている。
泣きながら、彼女は叫んだ。
「今までのアタシは、さっき死んじゃった。もういないもん。だから…。」
「早くしろ!時間切れだ!」黒い筒から声がする。
彼は、左手を差し出した。「もう、戻れないぞ。」
「じゃあ、おかあさんに電話しとく。何ていったらいい?」
「恋愛原理主義者になるって。」

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