第31回1000字小説バトル Entry20
「はーい。皆さん一列に並んでください。」
拡声器を持った男が僕たちみんなに声をかけてきた。
「そして、こちらを向いてください。」
ばらばらなタイミングでみんなは彼の方向に体を回した。
「これから大事な話をするから聞いてください。」
僕はみんなの反応を確かめてから相槌をうった。
「今から、三つのトンネルのうち一つを選んで、中へ進んでもらいます。」
「名前は、左から貧・平・金です。」
「貧は、名前のとおり貧乏生活から始まります。あなたが、生まれてからその生活以上に貧乏になることは絶対にありません。」
「そして、中央の平のトンネルは、平凡な家庭に生まれます。あなたが生まれてからお金持ちになるか、貧乏になるかは分りません。」
「最後に金のトンネルを選ばれると、お分かりのようにお金持ちから生活が始まります。でも、それ以上にお金持ちになる事はありません。」
拡声器の男が話を終えると、傍聴者にざわめきが響きあがった。
「それでは、一人ずつ選んでお入りください。」
一列に並んでいた人々は首をかしげながらも各々のトンネルに入って行った。
そして、僕の番がやってきた。
僕は、迷わず金のトンネルをくぐり、人生のスタートラインへ足を踏み入れた。
真っ暗な世界から光を感じたので、僕は目蓋を持ち上げた。
僕は、空気を吸う事が出来た。嬉しくて泣き声をあげた。
最高の人生の始まりだと思い、体を動かし喜びを表現した。
しかし、すぐに目蓋が閉じ、自分の体の温もりを感じる事が出来なくなっていた。