第31回1000字小説バトル Entry22
目を開けると、濃い闇の中にいた。
カーテンに空いた穴から細い光の筋が走り、壁にコイン大の模様をつけていたが、部屋は真っ暗でなにも見えない。感触でベッドに寝ていることはわかったが、ちょっとばかり途方に暮れる、そんな暗闇だった。ドアがどこにあるかもわからない。おまけに飲みすぎで頭がずきずきする。
さっきから腿の外側に感じるぬくもりにようやく意識が届き、手をのばしてフトンの下に手を入れると柔らかい尻に触れた。それから背を撫で、肩を抱き寄せると彼女が起きた気配がする。
髪をすいてやり顎のラインをなぞると、彼女がキスをしようとオレの顔を探している。
舌を出して唇をなめてやる。すると彼女も舌を出してくる。先っぽで、ゆっくりと、よく絡まるように歯の裏と舌を交互に触れていると、彼女はオレの舌を吸うように口に含み、途端にオレの自由を奪う。彼女はさらに強い力でぐいぐい吸おうとする。
少し鼻で息をするようにしてオレは考える。
ここはどこだ?
あれは遮光カーテンか?
外は日が出ている。
明かりが欲しい。
この女は誰だ?
息が苦しくてオレはもうやめてくれと言うように女の頬に手を当てる。
この女は誰だ?
女はさらに強い力でオレの舌を吸い続ける。
女のわき腹と思われる辺りの肉を掴み、笑わそうと思う。
女は笑わない。
淡々と、働き者の蜂が蜜を吸い続けるように、職業的義務感をもってオレの舌を吸い続ける。息が苦しい。
まったくの暗闇で、オレは舌を吸われている。この女は笑わない。
やがてオレは思い直す。
ここがどこかの居心地がいい部屋で、隣にいるのがひっかけてきた女だって?
悪いことが起きているのかもしれない。
もっとずっと悪いことが起きているのかもしれない。
暗闇の中で、オレには何もわからない。
それから気を失う。
さっきの記憶を引きずったまま目を覚ます。5秒?5分?そんなに経っているとは思えない。
今度は真っ先に腿に触れる感触に気がつく。那美だ。
夢か。
「那美?」
カーテンの穴から光が走り、壁にコイン大の模様を作っている。
隣の女がゆっくりと身を起こす。音でわかる。それからゆっくりと顔を近づけてくる。
オレを探しているのだ。
「那美?」
まずいな。
「明かりをつけてくれ」
オレは弱々しい声で懇願する。
首をつかまれる。物凄い力で抱き寄せられ、暗闇の中で何かが近づく気配だけがある。
夢じゃあなかったのか。
「那美」
「誰よ。その女?」と女が言う。
?
誰だこの女?
明かりが欲しい。