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第31回1000字小説バトル Entry28

またあえるよ

 その日は、いつもより早く目が覚めた。明るいのに夜みたいに静かで、とても寒い。
昨日から降っていた雪のせいだ。家族はまだ眠っていた。なんだか、世界を独り占めした王様みたいな気分だった。窓から顔を出すと、外は真っ白で、空気がビリビリと耳に聞こえない音をたてていた。
景色は、いつもとは全然違っていて、とてもきれいだった。
町中がこうなのかな、と思って、急いでオーバーを着込んだ。足が埋まってしまうだろうから、長靴も履いて。

 友達の家もみんな真っ白だった。
誰もいないのに、道には車の跡と、散歩の人と犬の足跡だけはあるんだ。
王様としては、少しショックだったね。
犬の足跡をたどっていったら、近所の公園の前に出たんだ。
公園は、全く足跡がなかったんだよ。うれしくてモサモサと入っていったら、人がいるんだよ。公園のまんなかに横たわっていたんだ。僕は、びっくりしながら近づいた。
その人はとてもきれいで、肌はとても白くて、本で見た天使みたいだった。
揺すってみたら、その人はまぶしそうに目を開けた。

「あ…、死ねなかったんだ。」

 その人が起きて、僕はうれしかった。一人きりではつまらなかったからね。
「ここで、なにしてたの?」
その人と目が合った。すごくきれいでびっくりした。自分の顔が赤くなっていくのがわかったよ。
「眠ってたんだ」
「寒くないの?」
「ちょっと寒いね」
どうして公園で眠るのか気になったけど、その人があんまりきれいだったから、見とれていたよ。
その人は、にっこり笑って、僕の頭をなでた。その手が冷たくて、本当に天使かもって思った。他の人とは全然違うんだ。
「風邪引くから、もう家に帰ろう」
僕は、その人と話がしてみたかったけど、つながれた手の冷たさに何も言えなかった。
公園がもっと広かったらよかったのに。
出口で、思い切って聴いた。

「また会える?」
「生きていたらね」
その人は、微笑んだ。
「『いきていたら』って、どうやったらわかるの?」
「冬なら簡単さ。息が白かったら、生きているってことだよ」
「じゃあ、僕らは生きているんだね」
「そうだよ」
その人は、手を放して、バイバイって僕に言った。
後ろ姿が見えなくなるまで、僕は立っていた。

 
 それから一度も会えなかったよ。これが、僕の初恋さ。その人が、男か女かもわからない。
でも、生きているか、死んでいるかよりも、あの時は気が付けなかったあの人のつらさが、少しでも和らいでいればいいと思うよ。

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