第31回1000字小説バトル Entry29
「みきちゃん大好き!」
今日も3歳になる娘の元へ、幼稚園の男友達が毎日家へと遊びに来る。ある者は手に公園で取ったのであろう野草の束を持ち、ある者はおそらく幼稚園で作ったであろう切り絵の蝶を手に持っている。娘はいつも貰えるプレゼントはとりあえず受け取りはするのだが、あまり興味は無いらしく、すぐ私にまとめてどばっと渡すと、家の前にある公園へと走って行ってしまう。その後を男の子達は懸命に追い駆ける。何やら不思議な光景であるが、こうした冷たい所が男性諸氏に受けているのであろうか。
「僕大きくなったらみきちゃんと結婚するんだ!」
「そうすると、みきたんは一人っ子だから、もれなくおばさんがついてくるけどそれでもいいの?」
「???」
幼稚園年少の子供に内容が分かろう筈も無く、会話はいつもここで中断されてしまう。繰り返し、子供たちは貢物を持ってやって来る。毎日こんな事が繰り返されていたある日の出来事である。
「みき!けいすけ君が好き!」
娘が突如、言い寄ってくる男の子の輪から離れた子と遊び始めたのである。理由は私とその子のママが仲が良かった為、一緒にプールに出かけたり、遊園地に出かけたりと言った”普通とは違う楽しい出来事”が続いたからであろうか。しかし、理由を知らない他の男の子達は決してそれを黙っては居ない。
「みきちゃん!こっちでみんなで遊ぼうよ!その方が楽しいよ!」
「いやだ!みきはけいすけ君と遊ぶ」
今までチヤホヤされていた娘が、急に甲斐甲斐しく1歳年上の男の子の面倒を見ている。何か変だ・・・急に何が起こったのだろう・・・
「こっちでお砂遊びをしましょ!みきおいしいケーキ作ってあげるから」
娘は無理矢理けいすけ君の手を引っ張る。ちょっと嫌そうである。そして無理矢理誘う娘の言葉に返ってきた言葉はこうである。
「けいすけ、みきちゃんよりバッタの方が好き」
娘の手を振り払い、けいすけ君はバッタを捕りに虫取り網を振り回し、バイバイも言わず公園を出て行ってしまった。がっかりと涙を浮かべる娘。やれやれ、まだまだ恋愛なんて早いのに。
「けいすけくーんまってー。みきもバッタ手伝うからー」
瞬殺で振られても、まだ諦めきれないらしい。娘の初恋が終わるまで、十分かからなかった事は大人になってからも、ナイショにしておこう。
逃げる者をついつい追いかけてしまうのは小さい子供でも大人でも、早々変わらない事であるようです。