第32回1000字小説バトル Entry12
11月のある日のこと。
「あんれまー!!」
僕の側に座っていたオバサンが悲鳴を上げた。どうしました? と聞こうと思った。
しかしあまりにも気持ち悪かったので、僕は寝ているフリをした(笑)
「ひええぇ。カミサマ! お助けを」
このバアサンなんだ? でもあまり関わりたくない。寝ぼけているフリをして隣の車両に行こうかな。
「ポケットに入れたはずの財布がないわ! 生活費が全部入っていたのにィ」
生活費を財布に入れてるんじゃないよ。愚か者めが。天罰じゃ。たたりじゃ。
なんて罵声が回りから聞こえてきた。
「どうしましょ! どうしましょ!」
どうやらオバサンには聞こえていない様子。
あぁーうるさい。どっかに行ってくれないかな。天国にでも…。
「サイフが無い。無い。無いわ。財布が無いのよ!!」
オバサンはヒステリーを起こしている。ヒステリーと言うよりイカレてる。バグってる。
「キョエェェェッ!! 私のサイフを盗んだのは誰よ!?」
バカみたいにうるさい。これで寝たフリするのは無理かな。
「今返せば許してあげるわ! さぁ私に許しを乞いなさいよ!」
その時一人のオジサンが立ち上がった。
「ヘイ。そこのババア、うっせえんだよ」
「なんですって、よくも…この私に対してッ!!」
どっかのお嬢様なのかな? それにしても薄汚いボロまとってるよな。
どっかの女子高生も立ち上がった。
「そうよ。アンタみたいなオバサンがいるから、世の中が乱れるのよ」
「さてはあんた達グルね…? みんなでよってたかって…モキモキ」
オバサンはワナワナ震えている。膝小僧も笑っている。
「人の不幸をあざ笑うハイエナども…無理心中してやるわ!!」
オバサンは電車の操縦席に向かって走り出した。
「ババアを止めろ! なんとしてもだッ」
オバサンの目の前に警官が二人立ちはだかる。
「止まれェェッ!! 射殺するぞ!!」「できるもんならやってみなさいッ」
「ウワァァァァァ」
警官二人はオバサンに撥ね殺された。撥ねられた警官は窓ガラスを突き破り外に飛び出していった。
「そのオンナ凶暴すぎるッ。やむを得ない! 生け捕りは諦めろッ」
オバサンは操縦席まであと少しの所まで行ってしまった。
「電車を脱線させてやるわ! 財布を盗んだ下民どもよ。後悔なさい」
オバサンが操縦席に入る。
「なんだ! オマエは? ウワァァァァァ」
運転手はオバサンに頭を掴まれ、その破滅的な握力によって絶命した。
「アクセル全開よッ」
電車はぐんぐん加速していった。光の速さを越えるほどの速度で。
「みんな何かに掴まれェッ!」
その時電車は転倒した。
30分後救急車が駆けつけた時にはすでに手遅れだった。
死者1名 重症92名 軽傷26名 行方不明1名の大惨事になったのだ。
後に生存者は語っていた。
「死んだのはあのオバサンだけだったよな」と。