第32回1000字小説バトル Entry19
向日葵は、私の一番好きな花なんです。
小さい頃、家の近くに大きな向日葵畑があってね、夏は嫌いだったけど、散歩が好きで、麦藁帽子をかぶってよくその向日葵畑に足を運んだわ。
畑の前まで来て、腰を下ろして何時間も、日が暮れるまでずっと向日葵を眺めてた。
下から見上げると、とっても背の高い向日葵の花と花の間から漏れる光で時々目が眩んだりして・・。
まるで向日葵が光を発しているようだった。
私はふと思いました。
向日葵は強いなって。
こんなに暑い中、何一つ文句言わずにずっと立ってるんだから。
花が重たくて、少し猫背だけど、ちゃんと太陽の方を向いて立ってるの。
鮮やかな黄色を輝かせながら。
私も強くなりたかった。
どんなに辛くても、どんなに疲れても、ずっと立っている向日葵のように・・。
でも私には無理でした。
自分の弱さを認めるのが恐くて、ひとりで何でもできると強がってあなたを産んだけど、結局は捨てる羽目になってしまったわね。
あなたを置いて、男のもとへ行ってしまった私をあなたずっと恨んでいたでしょう。
彼と出逢ったのはあなたが3つの時でした。
事業に失敗して、サラ金から逃れるために遠くへ行ってしまうと聞いて、私は自分の感情を抑えることができませんでした。
この人について行きたいと。
あの時の私には彼しか見えなかった。
あなたにはおじいちゃんもおばあちゃんもいる。
でも彼にはもう私しかいないんだって。
そう自分に言い聞かせてあなたのもとを去ったのです。
今はその彼ともちゃんと籍を入れて、2人でのんびり暮らしています。
20年って長いわね。
その間あなたはどう生きていたんでしょう。
明るくて誰からも親しまれるような子に育ったのかな。
勉強はできたのかしら。
スポーツは万能だったのかしら。
料理も上手で、裁縫も、掃除も、洗濯も全部自分でできる子だったのかしら。
私はあなたの母親なのに、あなたのこと何にも知らないんですね。
あなたは私の中では6歳で止まったままだもの。
それは自分のせいだとわかっていても想像は募るばかりです。
最後にこれだけは言わせてください。
私はあなたを産んだことを後悔していません。
あなたが産まれた時から今まで、変わらずあなたを愛しています。
向日葵は太陽がないと生きていけないけれど、ちゃんと大きな花を咲かせています。
向日葵、あなたはあなたの名前に負けないくらい強い人間でいて下さい。
幼い頃私が見ていたあの向日葵のように・・。