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第32回1000字小説バトル Entry20

コンビニのことで

コンビニで漫画雑誌を立ち読みする。
少し離れた女性雑誌コーナーでミカも立ち読みしている。
どんな状況下で人は雑誌を買うのだろう。
などと考えながら、3冊目に手を伸ばす。
と、その時、後ろで何かがぶつかる音がした。
レジに店長が一人で立っている他は、ミカと僕以外誰もいない。
と、またさっきと同じ音。
ミカは雑誌に夢中だ。
僕は音の出所を突き止めた。
冷蔵庫。
缶やペットボトルの並んだ、ガラス張りのアレだ。
ガラスの内側で、烏龍茶とコーラの缶が横向きに引っかかっている。
さっきの音は、この二つが棚から押し出されて落ちてしまったときのものに違いない。
そう思って見ていると、案の定、冷蔵庫の奥から手が伸びてきて、引っ掛かっていた缶を回収した。
幸運だったのは、その二つが、商品の並んでいない列の前に引っ掛かったことだ。
いや、ここで言いたいのはそんなことではない。
その、缶を回収した手が、どう見ても人間のそれではなかったのだ。
僕はさりげなく、冷蔵庫の前に行き、商品を選ぶふりをして奥を覗き込んだ。
奇妙な手が現れた品切れの列から冷蔵庫の奥が見えた。
猿だ。
しゃがんだ猿が両手に補充用の商品を持って、じっとこちらを見ていた。
猿か…。
「テリーボックス、売り切れてるみたいね」
横に来たミカが突然言う。
「テリーボックス?」
「ほら」
〈テリーボックス 140円〉
僕が冷蔵庫の奥を覗くために利用し、猿が缶を回収するために利用した品切れ状態の列にはテリーボックスが並んでいたらしい。
「テリーボックス?」
「テレビで見たけど、生産が追いつかないのよ」
「へえ…」

僕たちはレジに向かった。
たばこと水を買う。
「冷蔵庫の中にいるのは…」
店長が愛想良く頷く。
「猿です」
「やっぱり」
「大丈夫なんですか?」
「猿が?」
「ええ」
「平気ですよ。よくやってくれてます」
「商品の補充を?」
「そうですね」
「飼ってるってことですか?」
店長は、まさか、と言って笑顔で首を振る。
それからいきなり声をひそめて、
「飼ってるとか、そういう言い方、気をつけて下さい」
冷蔵庫の方で、また何かがぶつかる音がした。
店長とミカと僕はそちらに目を向ける。
店長がひそひそ声で続ける。
「あいつに聞かれたら大変なんですから」
「そうなんですか?」
店長は、深刻そうに頷く。
「実は、テリーボックスが品薄なのもあいつのせいなんです」
「本当に?」
ミカがひどく驚く。
そのミカの反応に、僕は驚く。

で、テリーボックスって何よ?

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