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第32回1000字小説バトル Entry3

じゃあ今度の日曜日にね

「坂口!」
呼んだのは、彼の高校時代の友人、吉田。
二人は、互いの近況を話した。吉田が訊いた。
「お前、ここで誰か待っているのか?」

「……吉田、今暇?」
二人は、近くの喫茶店に入った。
なかなか可愛いい店員だが、坂口の表情は暗かった。
席につき、坂口は話した。
「俺さ、今日、デートだったけど」
「ホホゥ、スッポカされた」
「多分、ネカマに騙されたんだよ」
「なかなか旬な話題だね」
坂口は、吉田を無視して続けた。
「やっぱ、出会い系サイトって難しいよな。登録して、女からのメールを待つシステムでさ、三通しか来なかったんだけど。
その中の一人と気があって、一ヶ月ばかりメール交換してたんだ。19歳フリーターで、HNが『snow』。好きな物が一緒で、まあ、ともかく楽しかったんだよ」
「snowって、例えば、雪子とか?」
「名前からとったって書いてたからそんな感じだと思う」
坂口はため息をついた。吉田の口の中で、アイスコーヒーの氷がガリリと鳴った。

「俺のプロファイリングから、そいつは、25〜28歳、痩せ型、エロゲーよりギャルゲーの方が実は萌える、意外に髪がサラサラの男だ」
坂口は、ぐったりした。
「誰だよ、それ」
「おい、リバプール方式だぞ」
吉田はガハハと笑った。
「本当に女かもしれないじゃん。一回待ちぼうけをくったぐらいでクヨクヨするな!」
「そうかぁ」
「もし本当にネカマだったら、俺が女を紹介してやるよ」
「いや、出会いを待つだけの俺が悪いんだよ」
「坂口、俺の胸で泣け!」
「気持ち悪るっ」


「そろそろ出るか」
「ああ」

「ありがとうございました」


「さっきの店員、結構可愛かったな」
「今ごろ気が付いたのかよ」
「吉田、ゴメンな。時間取らせて」
「いいよ、暇だったし」
「ありがとナ」
「大丈夫、お前がネカマに騙されたなんて絶対に誰にも言わないから」
そう言って坂口の肩を叩いた。
「ははは」
坂口は少々(いやかなり)疑いながら、駅の改札で吉田と別れた。

坂口は、電車に揺られながら思った。今日が笑い話になったのは、吉田のおかげだ。お礼にこの話はネタとして献上してやるよ。
坂口は、楽しい気分で家路についた。

吉田は、電車には乗らず、人気のない高架下へ走った。

ごめん、坂口。ネカマは俺だよ。他のやつからお前のことを聞いた。
女の振りしてメールを送った。
今日だって、俺が仕組んだ。
嘘ついてごめん。俺、高校卒業してからもずっとお前のことが好きだ。

吉田孝之の涙は、止まらなかった。

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