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第32回1000字小説バトル Entry4

僕らの儀式

そろそろ夕暮れだな、健二は壁の時計を眺めた。そろそろ優子の来る時間だ。
あと十分もしないうちに、優子はそのドアを開けて微笑みながら僕にこう言うんだ。
「ただいまぁ、うふふ、いい物買ってきたよ、なんだと思う?」ってね
彼女の笑顔は大好きだ。冬のコタツみたいに暖かくて優しい。名前の通りだとつくづく思う。
ほら、そんなこと考えてるうちに、階段を上ってくる音がする。カンカンカカン
鉄の階段を弾むように歩いてくる。ほら、カンカカン、踊ってるみたいだね
彼女のプレゼントはいっつも僕を楽しくさせてくれる。そんなに高いものやすごいものじゃないんだよ。でもね、すっごく楽しくて嬉しいものさ。
僕はいつもそのプレゼントを手に取りながら、彼女がどうやって探したのか、何を考えてそれを買ったのかしばらく考えてみる。
彼女はそれをニコニコしながら黙ってみてる。そして決まってこう言うんだ。
「うふふ、どう?わかった?さあどうでしょうか」楽しそうに笑いながらね
小さい鍵やミニチュアのクルマ、綺麗なまあるい小石、ガラスの魚もあったかな
その小さなものの中には、彼女の気持ちと彼女の宇宙がぎっしり詰まっている。
時々は将来の夢もちょっぴりね。
プレゼントを受け取るといつも僕は彼女が頭を悩ませながら、いろいろ手に取ったり、ためつ眇めつしながら、吟味しているところを想像する。そして彼女がそう想った理由を探ってみる。
僕が答えを言ったときの彼女の反応もおんなじ物さ、楽しそうに、でもちょっと得意げに
「半分だけ当たり~でも半分は外れね」そういって得意げにその理由を話して聞かせる。
僕はその話が大好きだ。優しくてちょっと神秘的な、広がりのある彼女の話は、子供のころ読んだ童話に似ている。ワクワクして楽しくて夢見心地になっちゃうような童話にね
僕はいつもそのお返しに、その物語を絵にして彼女に渡す。クレパスや色鉛筆で、なるべく淡く、儚く、そしてちょっぴり寂しげに。彼女の世界を包み込むようにね。
彼女はしばらくその絵を見つめ、満足そうに頷くと、僕に花マルをくれる。ちょっと照れくさいけど、それが僕らのいつもの大事な儀式さ
おや?足音が消えた。部屋の前に来たな、聞いててごらん。
ガチャ、「ただいまぁ、うふふ、いい物買ってきたよ、なんだと思う?」
ほらね

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