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第33回1000字小説バトル Entry2

奴らの見分け方

 複数の歩道と車線が絡み合う雑踏の中を、奇妙な歩調で歩いている少女がいた。優雅にも見えるが、時々足の出し方を忘れてしまったように佇む事もある。歩き方に初心者というものがあるとしたら、明らかに彼女がそうであろう。
 そのうちに少女は、あるファッションビルのショーウインドウの前まで来て立ち止まった。中に展示してある服飾に興味を引かれたらしい。そこには、色とりどりの帽子やマフラーが千切り絵のように華やかにレイアウトされていた。
 彼女は、両手でガラスを抱えるようにして、ウインドウの内側をじっと見詰めている。
「何を見ているんだ」
 俺は少女の横に並んで話し掛けた。しかし、少女は答えない。
「欲しいか?」
 少女はただ頷いた。
「どのくらい欲しいんだ……」
 俺はさらに少女の耳元で囁いた。
「喉から手が出るぐらいか?」
 少女はもう一度頷いて見せた。俺の顔をうかがうように見つめる瞳が、不思議な色を含んでいる。
 次の瞬間、俺はその少女を力いっぱい突き飛ばしていた。
 少女はバランスを失って仰向けに反り、頭からウインドウガラスに突っ込んだ。ガラスが砕け、その細かな破片がきらきらと光りながら四方に飛び散ると、さらに雷鳴のような光と爆音が周りの空間を引き裂いた。
 俺が手にしているのは、銀色に光る巨大な銃器だった。そこから放出された無数の火球が、ウインドウの裏に落ちていく少女の体に集中した。
 事はあっという間に終わった。
 街の騒音が掻き消え、群集は水に落ちた油のように広がって、俺を身じろぎもしないで見つめている。俺は手にした銃を再びコートの下に戻した。破壊され尽くしたショーウインドウから、粉塵が舞い上がって、少女の残骸を隠している。
「皆さん、慌てないで。特殊捜査官です。今、人間に化けたボディスナッチャーを一体退治しました」
 言いながら、懐から取り出した黒色の証明書を高く掲げて人々に見せた。
「もう大丈夫。後始末は当局がしますから、そのままゆっくりと離れてください」

 巧妙に人間に化けていてもまだまだその言語能力は劣っている。奴らは人間の会話はわかっても、諺や格言などの突拍子もない言い回しは理解できずに、パニックを起こしてしまうのだ。論理思考ができなくなるのである。
 例えば「耳にタコ」といえば、思わず自分の耳からタコをだしてしまう。いや、これは冗談ではない。
 現にさっきの少女は、喉から手が覗いていたのである。

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