第33回1000字小説バトル Entry21
みやげ物屋から出てきた僕は、ため息と共に傍にあったベンチへ腰掛けた。
僕の目の前を、観光客を引き連れたミッキーマウスが闊歩していく。
それを膝に頬杖をつきながら見届けると、もうひとつ塊のようなため息を吐いた。
……ここは人が多すぎる。
もともと、人ごみは苦手なのだ。
パレードやら、シンデレラ城やら、なんだかんだ。
普通の遊園地なんかよりは遥かに面白いのだろうし、ロマンティックであるのかもしれない。
しかし、僕の性には合わなかった。
何処か田舎の澄んだ河原で一日中昼寝したい。
そして夜には寝転がったまま、藍色の空に星を数えるのだ。
その方が僕にはずっと合っている。
目の前を往来していく人の群れ。
例外なく楽しそうな人々の中で、僕に気を留める人は誰一人としていない。
苦笑する。
自分はこんなにも顕示欲が強かっただろうか。
今まで騙し騙し生きて来れたはずなのに。
ただ群集の中にいるだけで不安に駆られる自分が、少し滑稽だ。
群集の中の孤独は、孤独より孤独で。
それを知っているが故の不安。
通りの向こうを駆けて行く子供が、持っていたのカップからひとつ、ポップコーンを落とした。
ポップコーンはあっさりと地面に舞い落ち、子供はそれに気付かずに行ってしまう。
例えそれに気付いたとしても、落としたポップコーンは、食べられない。
そのポップコーンを見つめつづけた。
意味なんてない。
ただ、その孤独なポップコーンに、自分自身を投影してみただけだ。
いっそ踏まれてしまえ、と思った。
絶えない人の流れの、そのどれかに。
誰も踏まないでくれ、とも思った。
ただ少し道から外れただけの、哀れなそれを。
そして、きっと踏まれてしまうんだろうな、とも思った。
激しい往来、行き交う人々、交わされる弾んだ会話。
踏まれなかった。
いつまで経っても。
やがて、皆がみやげ物屋から出てきた。
彼等は口々に僕を呼び。
僕の考えていたことは一時の気の迷いなんだって、気付かせてくれた。
何気ない言葉が。
どうやら、もう行くらしい。
僕は最後にポップコーンを見、
「ありがとう」と告げた。
誰にも聞こえないように。
一時でも僕自身であったポップコーン。
それに、自分自身で引導を渡そうと思った。
思いっきり、この上なく、踏み潰してやろうと思った。
なんの迷いもなく生きていけるようにと、願いを込めて……。
そして、僕はそのポップコーンへと近づいて行k
どっかのガキがポップコーンを踏み潰して走り去っていきました。
あ。