第33回1000字小説バトル Entry22
何しろ10年ぶりの帰郷である。正確には11年。第3希望の大学に合格して、一人暮らしをするためにあの町を出たのは18の時であった。
そして再び、あの町で暮らすために帰っていくあたしは、今年ついに30を迎えるのである。
はあ…ほんとうに、あたしが、「ミソジ」?
11年の月日の間にはまったく、色々な事があるもので。
妹は国際結婚し、2年ともたずに破綻。現在はあの「9月11日以降」のニューヨークで職探しをしている。父は昨年末、末期の前立腺ガンが発覚。もはや手術も効かない状態とあって、せっせとアガリクス茸の錠剤(濃縮液体やら何やら様々にあるけれど、ウチの母親いわく、乳酸発酵処理をした錠剤が一番イイんだって)を飲み込む日々である。
あたしはと言えば。東大を卒業して、そのまま院に進み、ロシア文学の研究という何とも時代錯誤的なことをやらかしていたのだけど。出会い系サイト(注、ケータイの、ではない)で今のダンナと出会って半年で結婚。瞬く間に2児の母となり…、博士課程まで進んだ学業の方は、出産・育児のための休学を繰り返して、今はもう何だかよく分からない状態になっている。
そもそもこの度帰郷することになったのも、ダンナが3年勤めた仕事を辞めて(ダンナはコッカコウムインであった)、教師の職につきたいと言い出したからである。2児の父でありながら、この言わずと知れた就職難の時代に、特権階級的な職をなげうち、教師になりたいという夢を追うという…その非現実さといい。彼の両親はその夢の実現のために、あたしたち家族の1年間分の生活費を貸そうと申し出た。…その甘さといい。あたしの両親は、折しも売出しに出た、自宅マンションの上階の空き部屋に住んだらどうかと提案し、手際よく代理人契約を済ませ、手付金だけ払ってくれた。…その、いかにも子を思う親の仕業のようであり、その実すべて「何とかしてかわいい孫をそばに置きたいがため」の策略ではないかとあたしに疑惑を抱かせずにはいられない…鮮やか過ぎる手並みといい。
まったくもって、小説のようではありませんか。
そもそもあたしはいつだって、ゲンジツから逃れようとしていた…夢の世界へ。しかし、この現実がそもそも夢のようであるのだと気付いたのは、20歳になるかならないかの頃。1つ年上の男と、苦しい恋愛をしていた頃のことだったと思う。
−だからあたしに夢のことなんて聞かないで。