第33回1000字小説バトル Entry24
4月23日火曜18時。私立高校五階音楽室での雑音。
「ねぇ先生、知ってる? あたし香川と別れたの」
「用が無いならもう帰れ」
「そんで今度は東間があたしのこと好きなんだって」
「どうもオメデトウ」
「何よ、妬いてくれないの?」
「子供は暗くなる前に帰りなさい」
「ムカつく」
「それは失敬」
4月27日金曜15時。ファーストフード店二階女子トイレでの雑音。
「ねぇ知ってる? 1組のアオモリ」
「3組のカガワと付き合ってんでしょ?」
「それが違くて、カガワのダチのアズマ」
「ウソ、なんであんなヤツがモテんのォ?」
「ユウコだってモテるじゃんかァ。ていうか今日のグロス超可愛くない?」
5月5日月曜正午。私立高校一階職員室での雑音。
「ねぇ先生、知ってる? あたし東間と別れたの」
「それはそれは」
「それで山口があたしと付き合いたいって。スゴクない?」
「じゃあもう帰れ。暇なら山口誘えばいいだろ?」
「妬けるでしょ?」
「どう見える?」
「そう見える」
「コンタクト合ってないのか?」
「ムカツク」
「ご自由に」
5月9日金曜深夜。カラオケボックス四階女子トイレでの雑音。
「ねぇ! 二年のアオモリ。今度は六組のヤマグチだってェ」
「マジ?」
「マジマジ、本人から聞いた」
「なんであんな普通の女がぁ?」
「男は普通の女好きじゃん。それよりさァイイ男いなくない? やっぱ合コンは駄目」
5月15日水曜19時。私立高校駅前の交差点での雑音。
「ねぇ先生、知ってる? あたしが山口達と別れた理由」
「知らない」
「本当は知ってるんじゃないの?」
「シリマセン」
「あたし先生が好きなの」
「……それはそれは」
「照れてる?」
「別に」
5月25日土曜14時。某デパート一階女子トイレでの雑音。
「ねぇ、知ってる? アオモリの噂。皆ウソだったらしいよ」
「マジィ?」
「本当は数学のォ、若い方」
「若いっても三十過ぎじゃん」
「狙ってるって」
「ゲ、趣味悪ゥ」
「そいつ妬かせるためのデマだって」
「じゃミサ、アズマ狙おうかな」
6月1日土曜夜。駅近くのマンションでの雑音。
「ねぇ」
「質問は五秒以内」
「あたしのこと好きでしょ?」
「知らないな」
「それ嘘でしょ」
「正解」
「え、何て言ったの? ドア開けてよ」
「多分、アタリ」
「どういう意味?」
「自分の言った事位覚えろよ」
「わっいきなりドア開けな――」
「――」
「……ねぇ、先生知ってる? あの噂、全部嘘よ」
「押して退くの意味取り違えてないか?」
「でも、成功」
「……ムカつく」