第33回1000字小説バトル Entry26
おじさんの名前は”たかひろ”という。妻子持ちで単身赴任中だった。おじさんといってもまだ32歳で、わりと顔も良かった。といっても、子供がいるのでおじさんと呼ぶ。
付き合い始めたときは「結婚」について考え始めた時期だったので、このおやじから結婚生活というものを盗もうとも思っていた。略奪したいのではなく、純粋に結婚生活のみを盗もうと思っていた。が、籍が入った人間とそうではない私では対応が違うようであり、満足するものは得られなかった。
ある日、友達の結婚式の帰りにおじさんの部屋に行った。全然いい男がいなかったし、酔っていた。
「たかひろ、シャワー浴びたい」
ドアを開けたおじさんにしがみついて、風呂に入れてくれるように頼んだ。
「酔ってる」
「うん。」
「楽しかった?」
「うん。一緒にはいろぉ。髪洗ってちょうだい。この爪じゃ洗えないよん」
ネイルサロンできれいにしてもらった爪を見せた。おじさんは魔女みたいだ、と笑った。
服を脱がせてもらい、バスルームで向かい合わせで座った。洗いやすいように下をむいて待っていた。おじさんは髪を濡らし、ガショとシャンプーボトルを押した。
「ひゃっ」
驚いて顔を上げた。
「なに? 冷たい!」
「トニックシャンプー」
「こんな冷たいの?」
半分ほど酔いが醒めてしまい、目線が胸に向いていることに気がついた。
「なんでさわってないのにたってるの?」
なぜか恥ずかしくなった。
「寒いときとか、刺激を感じるとこうなる」
遅いと思った。おじさんは、ガショガショとシャンプーをだした。
「やだ、つめたいよ」
トニックシャンプーを体にぬられた。
おじさんの目はきらきらしていた。私も、口で言うほど嫌ではなかった。普段は感じないところでもぞくぞくした。
「ひゃっけ!」
国の言葉がでた。
「そこはやだっ」
抵抗しても聞いてくれなかった。それでよかった。
「やだ、つめたいよ あったかいはずなのに・・・・・・」
その後も、ひやひや感はなかなかとれなかった。
おじさんとはすぐ別れた。月に一度奥さんが来る。一人暮らしにもかかわらず減りの早いシャンプーをみたらどうなるだろう。
結局、結婚生活とはいまだにわからん。
けどおじさんとの生活は違う。間違ってはいないかもしれないけど、暖かくなることはない。シャンプーがなくても。でも、あの快感が忘れられず、トニックシャンプー使用のフリーの男を募集中。なんだかんだいって、あのおじさんがほんとはすごく好きだったよ。