第33回1000字小説バトル Entry28
若いお婆ちゃんとその孫であろう男の子が僕の隣に座ってきた。
こんなガキンチョにちょっかいでも出されちゃかなわないと思い、僕は眠った振りをした。
「ねえおじちゃん、背中掻いて」
おじちゃん? 男の子がいきなり僕に背中を向けて言った。僕は何で知らないお前の背中を掻かなきゃならないんだ? そう思ったがお婆ちゃんの微笑みを受けて”いい人”が頭をよぎりその子の背中を掻いてあげる事にした。
シャツの下から手を入れて掻いてやる。
「右の上の方」
男の子は気持ち良さそうに僕に指示をする。
「今度は左」
やっぱりおかしい。僕がなぜこいつの背中を掻かなきゃならないんだ? 少し腹立たしくなり適当に手を動かした。男の子は身体をくねくねと動かしながら痒いポイントへと僕の指を誘導する。
”ポチっ”あれ? なんだこれ?
僕は掻いている指先に妙な金属のポッチを見付けた。指でそれをゆっくりとなでてみる。男の子は気持ち良さそうに目を細めて窓のガラスに顔をくっつけている。この感触からして、これはスイッチか何かの様だ。でもなぜこんな所にスイッチがあるんだろう? 僕はそのスイッチを押してみたい衝動にかられその場所から手が離れない。まだ男の子は気持ち良さそうにガラスに口を当てブリブリと変な音を出してラリっている。お婆さんもスヤスヤと寝息をたてて涎を垂らして眠っていた。
押してみようか? 一応男の子に聞いてみようとも思ったが、妙にラリっている様なので声をかけるのをやめた。
行くぞ! そう心の中で叫ぶと額に汗が滲んできた。妙に緊張した自分がそこに居る。
押すぞ! もう一度心の中で確認しながら僕は人差指に集中した。丸く小さなポッチが指先にフィットした瞬間……押した!
”ウイーンッ”
男の子の身体から妙な音がして腕と脚が引っ込み、頭もグイーンっと収納されてしまった。
「な、なんだ!」
僕はどうしていいのか分からない。
涎を拭いながらお婆さんが目を覚ました。視線をお婆さんに向けてこの異常な状態を察知してもらおうと目で訴えると、お婆さんがおもむろにバッグから布袋を取出して男の子? をその袋に入れた。
「お、お婆さん……」
「あーこれね。息子が寂しいだろって買ってくれたのよ”05ロボ”とか言ったかしら、簡単収納が最新らしいわね」
そう言って微笑むと、袋を膝の上に乗せまたスヤスヤと寝息をたて始めた。
なるほど。僕も母さんに買ってやろうかな。ってこれでいいの?