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第34回1000字小説バトル Entry11

雨。再会。再び別れ

雨。
月光と共に降り注ぐ、それは流星ではなく雨水だった。
「うわ、降ってきたぁ?」
雲一つ無いのに雨だけが降る。こんな事態を気象庁が予測できたとは思えないが、とりあえず、天気予報の一つも見られない多忙な日々の方を恨んでおくことにする。
「くそがぁ、せめて曇ってから降り出せよなぁ」
容赦なく服に染み入る雨水を、早々に諦めて受け入れようとしたその時、
「女の子が糞とか言わない」
唐突に背後から現れて、苦笑いながらコンビニ傘を差し出してきたのは彼女の元恋人だった。
「うお、何処から沸いて出た」
露骨に顔をしかめる彼女を、彼は爽やかな笑顔で受け流す。
「変わらんなぁ、口の悪さはいつまで経っても」
「あたしを女の子って呼ぶあんたはどうなわけ?カッコイイ皮肉かましてくれるじゃない」
彼は黙って傘を開くと、改めて彼女に差し出した。ピンと張られたビニールが、雨を弾いてやかましく吠える。暫くそれを凝視していた彼女は、渋渋ながら受け取ることにした。
「変わんないのはあんただ。皮肉屋な上に身勝手で・・・ホント変わんない」
「感心するだろ?」
「呆れてんだよ」
唐突に第三者の怒声が上がる。
「てめ、ふざけんな!」
鈍い音が響き、二人が振り返ると、鼻血を流した男がゴミ袋の山に倒れこむところだった。息を荒げたもう一人がゴミ山へ歩み寄り、力無く四肢を垂れるそれを掴み上げる。悲鳴も上げられないほど重症なのか、どちらにしろ、被害者はこの後、ろくな事をされないだろう。
彼女は走り出そうとした元彼の腕を掴み取った。振り返った彼は一瞬呆気に取られていたがすぐさま腕を振り払う。しかし彼女はもう一度掴み返した。
「大馬鹿、何回同じ事繰り返す気だ?」
「放せ」
「絶対にダメ。云ったでしょ、あんたには無理だって」
被害者がろくな事をされないと解っていても、彼が助けに行くのでは何の解決にもならない。それは、彼が一番よく知っていることだ。同じ事を何度繰り返しても、人を救えたことが一度も無いのだから。
彼は奥歯を噛締めて、ゴミ山の二人を振り返った。が、すでにあの二人の姿は消えていた。一瞬で討論する意義を奪われてしまった二人の間を沈黙が流れていく。しかし、先にそれを破ったのは彼女だった。
「傘、返す」
半ば呆然としている彼に傘を閉じて押し返す。早くここを、彼から離れてしまいたかった。
―思い出したくない―
無言で踵を返し、早足にその場を立ち去った。彼は声をかけてはこなかった。

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