第34回1000字小説バトル Entry2
透明なガラスの自動ドアが開いたとき、外の空気と共に若い男が入ってきた。
「いらっしゃいませ!」
まだ、バイトに入りたての髪の長い女の子が元気な声で彼を向かえた。
ここは、駅の近くにあるアメリカから進展してきた大型チェーンのファーストフード店だ。僕は、毎日、この店のレジの近くで本を読みながら、店の動きを読むのを日課にしていた。
先ほど、店に入ってきた男は、後ろのポケットから、ツバつきの野球帽を取り出し、目が隠れるように深くかぶった。
新人の女の子は、緊張を隠しながら帽子をかぶった男にメニューを手渡した。
しかし、メニューを男が受け取った瞬間、帽子を出したポケットとは反対から、刃渡り10センチ以上はあるナイフを取り出し、刃先を女の子へと向けた。
そして、彼は背負っていた鞄をカウンターへ置き店員達に叫んだ。
「この鞄にジャガイモを詰めろ!」
その声は店の中に響き渡った。
しかし、店員達は、彼の言っていることに理解できない様子で周りを見渡していた。
その瞬間、正義感が働いたのかは分らないが、僕は座っていた席を飛び出し帽子の男のナイフを手で掴みながら彼を捕まえた。
だが、店員と女の子は驚きと恐怖の叫び声をあけながら僕の手を何故か凝視していた。
僕も凝視されている手の平を気になって覗いてみた。
そこには、手の平に乗れるくらいのジャガイモとトマトが立って居た。
ちゃんと、手と足が2本ずつくっついていて、人間の顔と同じ突起物が断面に張られていた。
なにやら、二人は口をパクパクさせながら、怒りをあらわにさせながらもめていた。僕は、自分の耳を彼らのほうへと向けたが、残念ながら聞き取る事が出来なかった。
しかし、かなり深刻そうな表情はなんとなくだが読む事が出来た。
一分程時間が経ち二人は言い争うのは止め、お互い背中を見せるように外へと体を回転させてしまった。お互い顔は口を尖がらせ、納得いかない表情を作っていた。
しかし、ジャガイモは再び先ほど向いていた方向に体を回転させ、トマトの背中を見るような形にした。
次の瞬間、ジャガイモは自分の手を上に振り上げ、力を入れた握りこぶしをトマトへと振りかざした。
僕の手の上でふてくされていたトマトが潰れ、皮の中から体液が飛び散り、手の平は真っ赤になった。
そして、ジャガイモにも体液が付着した。
数ヵ月後、僕がテレビをつけたら、あの店のCMで、あのジャガイモとトマトが何故か仲良く絡み合っていた・・・