第34回1000字小説バトル Entry26
あたしってね、昔からどうも“貢ぎグセ”があんのよねー。
人のよろこぶ顔が好きなのよ、あたし。
持ってる物を『それ、いいね。どこで買ったの? 欲しいなー』な〜んて羨ましがられちゃうと、
ついうれしくなって『あげようか?』なんて言ってすぐにあげちゃうの。
この1ヶ月だけでも人にあげちゃった物、たくさんあるわ。
ライターでしょ、お気に入りの口紅でしょ、かわいい化粧ポーチ、
ブレスレットとか時計、もう思い出せないくらい。
でもさすがに、ものすごーく気に入ってる物とか、よっぽど高い物はあげないけどね。
小物程度ならすぐに『じゃーあげる』ってプレゼントしちゃうの。
だって、一度はあたしが使ったものなのに、それで相手に喜んでもらえると、
プレゼントしたこっちまでうれしくなっちゃうじゃない?
先週は京子にお気に入りのネックレスあげちゃった。いつもあたしが使ってたのにいいの? って聞いたら京子、
『宝物にするわ!』なんて言って大げさなぐらい喜んでくれて、あたしまでうれしくなっちゃった。
あんなに喜ばれると、また次も何かあげたくなっちゃう。人に貢ぐのがほんと好きみたい、あたし。
イケないことかしら? イイことよね。だって、相手に喜んでもらえるんだもの。
そうそう、つき合ってる彼の健一くんにも、いろいろあげたわ。
誕生日にはバッグもプレゼントした。他にも靴とか、年代もののジーンズとかね。
この前は、あたしが気に入っていつも使ってる電磁調理器あげたの。
彼ったらね、料理がすごく好きなの。腕前もプロ級なんだから。
でね、あたしんちに遊びに来て料理作ってくれるたびに、電磁調理器みて
いいなー、俺も欲しいって言うんだもん。
だから、そんなに欲しいならあげるって言って、プレゼントしちゃった。
でもね、一番仲良しのヒカルが健一くんにあげた電磁調理器、欲しかったみたいなのよ。
もっと早く言ってくれてたら、先にヒカルにあげたのに。
ヒカルったらすごく残念そうな顔しちゃって、可哀相になるぐらい。
だからね、健一くんごとヒカルにプレゼントしたの。だってヒカルったら、
『いいなー美智子の彼、かっこいいよね、優しいし』なんて言ってほめてくれたんだもん。ちょうど良かったわ、電磁調理器もついてるしさ。
あたしって、だめねー。ほんと貢ぎグセが治んないわ。
でもいっか、あたしがあげるものはみんな『おさがりの小物』ばかりだから。