第34回1000字小説バトル Entry40
我が銀河帝国は消え失せた。
我が、と言っても別に私が帝国の支配者だったわけではない。私はただの理屈っぽい一市民である。いや、一市民であった。ただ、深い愛国心に基づく帰属意識が「我が」という表現を使わせたのだ。
では、私にとっての支配者とはいったい誰だったのか。無論「銀河帝国」という程だから、当然偉大なる「銀河帝」が君臨していたのだ。が、今はない。そして「銀河帝」と呼ばれる程だから、当然彼が治めるべき偉大なる「銀河」があったわけだが、これも今はない。もちろん銀も河もないのである。全ては消滅させられてしまった。まあ銀河帝に代わって私を支配するのが、今度は金や山がある「金山王」の「金山王国」だったりすれば、私の傷心もかなり癒されただろうとは思うが。くだらない? 全くだ。
つまりこういう事である。例えば恋愛関係が決して自我の拡張ではなく、また社会が家庭の拡張などではなく、はたまた宇宙が地球の拡張といえる存在ではなかったのと同様、銀河帝国を凌駕するものは、銀とか金とか河とか山とか、そんな既存の存在などでは有り得ない。
では、それはいったい如何なる存在なのか。それは……
「それは……」
作者はしばらく無言で考えていたが、そのうち「んなもん分かるかい!」とわめいて投げ出した。そんなもん書けん。多分。少なくともワシには書けん。
なし! もう、何もなし! やめた!
それは……虚無! 虚無! 虚無!
何もない! 今や唯一の存在であった私の存在にさえ、あらゆる存在が否定された! てゆーか逃げやがった。存在なき宇宙に存在は存在しうるのか? 我が存在は何の存在の内に存在しているのか? 存在の存と在の字は似てるがつい在存とか書いちゃう奴は存在するのか? くだらない? 全くだ。しかしこうして考えている間なら、それ故に私は存在しうるのだ。それは認められるか。お願いです。認めてください。私、元・市民番号キハ6961は今こうしてただ存在するがためだけに言葉を連ねております。世界は今、ここに在る。私こそ世界、あと百文字超の世界、馬鹿と笑ってください、くだらないと嘲ってください。感想文は要りません。ただノイズの霧中で言葉の行く先を思う時、それは存在するのです。そう、私は唯一ここに存り、そう、私こそが宇宙の王であり、偉大なる支配者なのです。そうだ、畏れよ愚民ども、そう、余が王じゃ!
よし! 少し一服するか。