第34回1000字小説バトル Entry5
姫がモンスターに攫われ、救出のための勇者を募るために開かれた試合に参加した、若者のなかから選ばれたのは、金髪碧眼の若者だった。
国王はうやうやしく頭を下げる彼に熱い視線を送った。
「そちが、姫を助け出す勇者か?」
「・・・・・・ええ」
男は控えめに頷く。
謙虚な態度に国王は一抹の不安を抱いたが、先ほど見せた鮮やかな剣さばきと、華麗なる魔法に、彼の実力を疑う余地はない。
モンスターに攫われた愛姫を救い出すのは、金色の髪にブルーアイズの若者だと、昔から決まっていた。
だが、国王が奇異に思っていることは、これだけの実力を有しておきながら、魔法士にも、衛士にも立候補していなかったこと。
これだけの実力があればエリートと称される側近魔法士や、近衛団の試験を受けておかしくない。
それどころか、どの大会にも出場したことがないという。
あれば間違いなくどこかにスカウトされているだろうが。
さらに容姿も問題ない。
これだけの逸材が市井に埋もれていたのが悔やまれる。
話を聞けば、前職は不況のあおりを受けて倒産したどこかの企業戦士らしい。
サラリーマンで終わらすにはもったいなかった。
「なぜそちはその力で職につかなかった?」
「向いていないと気づいたからです」
「ならば、なぜこの試合に参加した? 優勝者は姫を助けにゆく任が与えられると知っておったのだろう」
「ええ、知っていました。姫のためならば、この命ささげる覚悟にございます」
「ほほう。だが、自分の娘を悪く言うのはなんだが、あれはかなり不出来な娘だぞ」
「容姿は関係ありません。重要なのは質です。質さえよければ、だれからもほっせられましょう」
見事なまでの受け答えに、国王は感激した。
「なにか、望むものはないか?」
「剣と魔法グッズ、そして諸経費をいただければ」
「ふむ、当然だろうな。他に必要なものがあれば遠慮なく申してみよ」
無欲な返答が国王に、より興味を抱かせた。
もし、無事に姫を取り返してきたら婿にしてもよいとさえ思う。
光栄にも国王から熱い眼差しを注がれた男は、考え込む間を置く。
そしておもむろに懐から紙とペンを取り出し、厚いフレームの眼鏡をかけた。
「それでは、この戦いの損害と利潤について説明させてください」
営業スマイルを浮かべた彼は、魔法でつくったスライドをポインターで指し示す。
彼は根っからの企業戦士だった。