第34回1000字小説バトル Entry8
「だから、」と、私は言ってみる。
「だから、私がいなくなれば、全てうまく
いくんでしょう?」
そして、彼の目を覗く。
彼は少しうろたえた表情をして、
「そんなこと…誰も言ってないじゃないか。」
と、つぶやく。
私はさらに、言葉を投げかけてみる。
「誰も言ってなくても、貴方の目がそう言ってるの。
全て、お前の責任なんだ。って。」
彼はとても悲しそうな目をして、
「そんな、勝手に推測されても困るよ。それに、全部が
全部、君の責任だなんて、思ってないよ。僕の責任でも
あるわけだし。」
と、答える。この回答はもうすでに収集済みだ。
「だから、全部が全部、私の責任じゃないって、やっぱり
私の責任である部分もあると思ってるんでしょ?」
これに対して、彼は否定するだろう。そして自分の責任である、
と回答するだろう。
「違うよ!僕だよ!僕が全部悪いんだ!君は何も悪くないよ…
ごめん…」
やっぱり。彼はすっかりしょげて、うつむいている。
かわいい!
「そうやって、わざとらしく私をかばったりしないでくれる?
本当は悪い所なんて何もないと思ってるくせに、謝るなんて。
貴方ってすっごく偽善者。」
「ごめん…」
さらにうつむく彼。ここからが私の見せ場。
「もういい!私が悪いんでしょう。私さえいなければ。って
思ってるんでしょう!」
私はここで、テーブルの上に事前に用意してあった薬のビンを
サッと取り上げ、素晴らしい早さでフタを開け、勢い良くザラザラと
飲み込んだ。口中に広がる素敵な苦味。
「何するんだ!!」
驚いて必死に吐かせようとする彼。大丈夫、薬の量は最初から、
ちょっと眠くなるくらい、に計算してあるから。
私はそのままベッドに倒れこんだ。彼の必死な顔が見える。
泣きながら、何か叫んでる。多分、今までの例からいって、
「好きだよ」とか「ごめん!」とかだろう。私はこの瞬間が
たまらなく好き。一番、愛してもらってる!って気がするから。
涙を見せて、許しを乞う、必死で私の身体にすがりついてる、彼。
何てかわいいんだろう。もっともっと心配して!
さて、ひと眠りして、目を覚ませば、きっと「よかった!」って
抱きしめてくれるだろう。「死ななくて、本当によかった!」って、
今まで以上に優しくしてくれるだろう。このことはもう沢山の人で
実証済み。
でも……あれれ?
薬が効いてきてボンヤリとした視界の端で私が見たのは、私を
追ってザラザラと薬を飲む彼の姿。
ありゃ…あれは致死量だ。
すっかり夢うつつの私、目が覚めたら彼の死体をどうにかしなくちゃ。
こんな例も…あるのね…