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第35回1000字小説バトル Entry20

再会に願うこと

「絶対帰る」
 泣きじゃくる私にあなたはそういったね。
「絶対、絶対だから、約束!」
 そういって私の手をとって、絡めた小指で一所懸命に指きりして。
 幼い日の夕暮れ。
 あのとき私は6歳で。
 あのときあなたは4歳で。
「……ちゃん!きっと、きっとだからね!?」
 泣き虫な私をいつも日の下に連れ出してくれた彼の姿が道の彼方にかすんで消えた後も、ずっと見送っていたっけ。
「ただいま〜!って、アレ?誰もいねぇのかよ」
 玄関で兄の声がする。久しぶりに帰ってきた兄は今日、一人の客を連れてくる。
「ま、いっか。おい、入れよ。あ?なに遠慮してんだよ」
 苦笑まじりの声に重なる聞き覚えのある声音。自然と鼓動がはやっていく。
 姿見の中の私は耳まで赤くなっていて、涙を浮かべていた。
「お〜い。いるんだろ?」
 部屋の前で呼ぶ兄に、おそるおそる障子戸を開ける。
「んだよ。居るんなら居るで」
「…ちゃん?」
 文句まじりの兄の後ろに立つ懐かしい面影。口をついた幼い頃の呼び名。
「ひさしぶりです」
 その言葉はどこか異国のアクセントが混じっていて、大人びた面立ちはどこか影を帯びていたけれど、
「おかえりなさい」
 私にはわかる。この人は私の知っているあの子。


「嘘だもん!…ちゃんもう帰ってこないんだもん!」
 父と異国へ旅立ったあの日。その少女はそういって泣いていた。
「絶対、絶対だから、約束!」
 そのとき僕は4歳で、性別なんて考えたこともなかったけれど、なぜかその子が泣く姿は苦手だった。
 何度も指きりして、夕日の沈む彼方へ歩き出しても、僕は幾度も振り返っては涙をぬぐっていたっけ。
「ただいま〜!って、アレ?誰もいねぇのかよ」
 やや古びたが、それでもあの日と変わらない玄関の戸を先導する幼馴染みが開ける。4つ上の彼との再会。そして誘われるまま訪れたここの変わらぬ姿が、忘れかけていたあの日の情景を鮮明に思い出させていた。
「んだよ。居るんなら居るで」
 開けられた障子戸の向こう、そっと現われるたおやかな女性。鼓動が、跳ね上がる。
「…ちゃん?」
 幼き日のままに僕の名を呼ぶ彼女の透き通るような黒瞳。変わらないんですね。
「ひさしぶりです」
 その声は上ずっていなかったろうか。
「おかえりなさい」
 その微笑みに、彼女があの日を覚えていることを願わずにはいられない。


 この再会から再び始まることを私(僕)は…

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